サージプロテクタとは
サージプロテクタとは、落雷などにより生じる瞬時の非常に大きな高電圧・高電流から機器を守るための保護機器のことです。
サージとは、落雷・雷雲や工業機械などから発生する数千ボルトの電圧のことを指します。自然災害では雷がありますが、スポット溶接、プラズマ切断など高電圧による作業は、放電の瞬間に極度の高電圧 (スパイク) 高電流 (サージ) を発生し、電子機器・コントローラー回路などに破損の影響を与える場合があります。
サージプロテクタはそれらによる事故を軽減、保護するためのデバイスです。サージ被害が発生した場合、被害がないと思われる器具にも損傷がある可能性があるため、器具を設置したと同時にサージプロテクタの取り付けを行う必要があります。
サージプロテクタの使用用途
サージプロテクタは、落雷や放電による高電圧、高電流での機器の破壊が懸念される箇所へ使用されています。サージプロテクタの具体的な使用場所は、以下のとおりです。
- 直撃雷発生時の避雷針等からの誘導雷 (異常高電圧) 付近
- 雷の影響から静電誘導による間接的な大電流が流れる近傍の場所
- 高圧電流の流れる送電線および鉄塔付近
- 高電圧・大電流が発生するモーター動力機器の近くや工場 (自動車修理など)
- アーク溶接機近くのアーク発生時にノイズを放射する場所や取扱い工場
- ネオン看板などの高電圧を放電する近傍
サージプロテクタの原理
サージプロテクタは、高電圧・電流のサージの印加時に、内蔵の非線形素子が低抵抗な状態となり、接地側 (グランド側:GND) へ回路的にサージを逃がす働きを活用します。サージプロテクタに接続された様々な電子・電気機器を破壊から保護するのが役割です。
サージプロテクタは、サージ電流を分流させ過電圧を制限するため、1個以上の非線形素子 (電圧をかけたとき、素子に流れる電流が電圧と比例しない素子) を内蔵しています。この素子は雷サージ吸収素子とも呼ばれます。
サージプロテクタの通常時は、電気を通さない絶縁物と同等の状態で、電源電圧に対して高抵抗です。サージが発生したときに、内蔵の非線形素子の働きにより、瞬時に高抵抗から低抵抗となります。
そして、サージ電流を接地側に流すと同時に雷サージの電圧を抑制し、その後に元の高抵抗に戻るので、電流が流れ続けることはありません。サージプロテクタを選定するポイントは、通常にサージ処理した時の残留電圧に基づく電圧防護レベル (最大サージ電圧) です。
サージプロテクタのその他情報
1. 電源タップのサージプロテクタ
家庭用や職場オフィスで頻繁に活用される電源コンセントのタップにおいても、サージプロテクタが内蔵されているものがあります。この場合のサージプロテクタ用途に用いられているデバイスは、雷サージ吸収素子であり、通称「バリスタ」と呼ばれています。
バリスタは「Voltage Variable Resistor」の略称であり、一般には積層チップセラミックスが用いられ、ある閾値電圧を超えると量子力学的なトンネル効果により大電流を流せる素子です。
順逆ダイオードと並列容量で同様の機能の回路構成は可能ですが、面積面で不利なため、通常バリスタが用いられています。バリスタを用いた保護回路は電源タップに限らず、様々な電子・電気機器で活用されている状況です。
2. サージプロテクタの性能指標
サージプロテクタの性能指標の一つに、最大サージ電圧があげられますが、この電圧は測定方法も含め、公の規格で規定されています。
例えば、国際試験規格となるIEC61000-4-5は、JEC210/212規格 (国内試験規格) に比べて、同じクラスの製品においても最大サージ電圧の値が低くなりますが、これは測定方法の違いによります。