ボルト軸力計

ボルト軸力計とは

ボルト軸力計とは、ボルトが発生している軸力の大きさを知るための計測器です。

ボルトを含めたねじは、ねじ自体が引っ張られて元の長さに戻ろうとする弾性力によって、対象物を固定する力を発生しています。引っ張られたボルトが元に戻ろうとする力を軸力と呼び、ボルト軸力計によって計測します。ボルト軸力計には超音波式と油圧式が存在しますが、油圧式はトルシアボルトなどの製品検査に用いられる軸力計です。

一般的には、超音波式のボルト軸力計が普及しています。非破壊で検査が可能で、装置が小さく使う場所を選ばないなどのメリットがあります。

ボルト軸力計の使用用途

ボルト軸力計は、特に軸力管理が必要な締結の検査に用いられます。量産製品の締結検査に用いられることは稀であり、例えば風車や発電所といった施設の建設などが代表的な用途です。

その他の使用分野として、研究開発が挙げられます。軸力を知るためには歪ゲージを用いた軸力ボルトが使われますが、ねじに穴を開けたり歪ゲージのリード線が通せるような工夫もしなければなりません。ボルト軸力計は耐久試験など、試験前と試験の経過、試験終了時のボルト軸力の計測などにも有用です。

ボルト軸力計の原理

ここでは、超音波式のボルト軸力計の原理を説明します。超音波ボルト軸力計で計測するのは、締結によって生じるボルトの伸びです。理由として、ボルト中を伝わる超音波の伝播速度が変わることと、ボルトが伸びことが挙げられます。

超音波の伝播速度は、ボルトに作用している応力の大きさによって変化します。ボルトを締結していない状態とボルトを締結しボルトに引っ張り応力が生じている状態では、超音波の伝播速度は遅くなります。

   v = v0 (1 – ασ) 

v: 応力負荷状態での超音波の伝播速度
v0: 無負荷状態での超音波の伝播速度
α: 材質と超音波の周波数によって決まる計数
σ: 締結によってボルトに生じている応力

また、応力が発生している状態は、ボルトが伸ばされていることを意味します。

   l = l0 (1 + σ/ E) 

l: 締結によって伸びた状態のボルトの長さ
l0: 無負荷状態でのボルトの長さ
E: ボルトの材質のヤング率

ボルトの締結によって超音波の伝播速度が遅くなること、またボルト自体が長くなっていることから、ボルトの端面から発射した超音波が先端まで伝わり反射して戻ってくるまでの時間は、無負荷状態のボルトよりも長くなります。つまり、無負荷状態と締結状態での超音波の電波時間の差が生じることを利用しているのが、超音波式ボルト軸力計の原理です。

ボルト軸力計の種類

ボルト軸力計のほとんどは超音波式ですが、油圧式のボルト軸力計もあります。油圧式のボルト軸力計はトルシアボルトと呼ばれる、破壊をともなうボルトの検査や強度試験に持ちられるものです。

ボルト軸力計のその他情報

ボルト軸力計を使用する際の注意点

超音波式のボルト軸力計が用いられますが、ボルト端面が平行になるように研磨が必要になるなど、ボルトの軸力は必ずしも簡単に計測できるわけではありません。ボルトの軸力管理はとても重要ですが、軸力を直接知ることは難しい場合がほとんどです。

工業製品の生産管理などでは、締め付けトルクや締め付け角度による管理が行われています。しかし、締め付けトルクや締め付け角度は、軸力の代用値に過ぎません。最も多く行われている締め付けトルクによる管理は、ねじ面やねじの座面の摩擦係数がある想定範囲内にある場合に限ってボルト軸力の代用値になります。

摩擦係数が想定範囲から外れていれば、締め付けトルクを管理しても、狙いどおりの軸力を得ることはできません。トルク管理によるボルト締結の管理においては、ねじやねじ座面の摩擦のばらつき範囲を想定し、生産においても想定範囲内を保つことが重要です。

参考文献
https://www.dakotajapan.com/maxseries.html
https://www.honda-el.co.jp/hb/3_25.html
https://www.tohnichi.co.jp/products/detail/79
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1933/43/506/43_506_223/_pdf
https://magazine.cartune.me/articles/2368
https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/viscoelasticity-basic1/

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