メカニカルブースターポンプ

メカニカルブースターポンプとは

メカニカルブースターポンプとは、既設のポンプの能力を増大させたい時に、切り替えて用いられるポンプのことです。

メカニカルブースターポンプを用いることによって、必要な真空状態にまで気圧まで下げたり、またその到達時間を短くすることができます。

メカニカルブースターポンプは一般的に、単独で用いられることはありません。他の油回転真空ポンプ、ドライポンプ、などの粗引きポンプと組み合わせて用いるポンプです。他の既設ポンプで粗引きとして一定レベルの気圧にまで低下させ、既設ポンプが苦手になる気圧になったところで、メカニカルブースターポンプを作動させます。結果的にシステムとして、排気速度を大幅にアップさせることができます。 

メカニカルブースターポンプの使用用途

メカニカルブースターポンプは、中真空と呼ばれるレベルの真空状態が必要な場合に用いられます。

真空とは一般的には空気が無い状態がイメージされるかもしれません。しかし実際には気圧が通常よりも低い状態のことであり、真空度という尺度によって段階分けされるものです。

真空ポンプにさまざまな種類がありますが、油回転式真空ポンプやドライポンプなどは、大気圧状態から空気を排気し、気圧を下げることが得意なポンプです。このように大気圧から気圧を下げることを「粗引き」といいます。粗引きによって徐々に気圧が下がってくると、油回転式真空ポンプやドライポンプでは排気効率の低下が避けられません。そこでメカニカルブースターポンプに排気の役割をバトンタッチします。構造が違い得意な領域が異なるポンプを組み合わせて用いることによって、求める真空状態に早く到達することが可能です。

また真空状態を利用することで、さまざまなものが製造できます。例えば真空包装、真空乾燥、真空蒸留薄膜、真空冶金、宇宙開発、真空含浸、脱ガス、半導体プロセス、低密度風洞実験など幅広い分野で使用されています。

メカニカルブースターポンプの原理

メカニカルブースターポンプは、二つのひょうたんのようなローターによって、空気を掻き出すようにしながら排気するポンプです。二つのローターはお互いに逆方向 (内側) に回転するようになっており、それぞれのローターが同期してタイミングよく、ケーシングの内部に真空を作り出す構造になっています。吸気側から吸引された空気などの気体はローターとケーシングの隙間の空間に閉じ込められ、2つのローターが回転することによって排気側に気体が押し出されます。

メカニカルブースターポンプのその他情報

メカニカルブースターポンプが用いられる真空レベル

真空とは空気が無い状態ではなく、空気圧が低い状態であることはすでに述べましたが、具体的にJISでは通常の大気圧レベルである10^5Paより低い状態を「真空状態」としています。さらに真空状態は5つの段階によって区分けされています。

  1. 低真空 (low vacuum) : 10^5 ~ 10^2 Pa
  2. 中真空 (medium vacuum) : 10^2 ~ 10^-1 Pa
  3. 高真空 (high vacuum) : 10^-1 ~ 10^-5 Pa
  4. 超高真空 (ultra high vacuum) : 10^-5 ~ 10^-8 Pa
  5. 極高真空 (extremely high vacuum) : 10^-5~ 10^-8 Pa

5段階の真空レベルの中で、メカニカルブースターポンプが実現できるのは中真空段階です。大気圧からの粗引きは油回転真空ポンプやドライ真空ポンプで行い、中真空レベルの1Pa ~ 0.1Pa でメカニカルブースターポンプに切り替えるのが一般的です。ドライ真空ポンプでも中真空レベルに到達させることは可能ですが、排気速度が大きく低下し時間がかかるため、メカニカルブースターポンプに切り替えて使うメリットが得られます。

中真空よりも高い真空状態 (低い気圧状態) を作り出すためには、ターボ分子ポンプ、油拡散ポンプなどさらに他のポンプに切り替える必要があります。

参考文献
https://kurashi-no.jp/I0017669
https://ulvac-kiko.com/support/pump07_mechanical.html

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