マグネットクランプ

マグネットクランプとは

マグネットクランプのイメージ

図1. マグネットクランプのイメージ

マグネットクランプとは、磁石の力で金型を吸着して固定する装置です。

マグネットクランプは、主に成型機などにおける金型の装着に使用されます。従来の金型取付板を用いて手締めで金型の脱着を行う場合、手作業でボルトを1本ずつ締め付けたり緩めたりする事が必要です。場合によっては数時間単位で時間がかかる上に重労働となります。一方、マグネットクランプを用いる場合、着磁・脱磁の切替時間は、わずか数秒かつボタンを押すだけで簡便に完了します。様々な産業分野における、生産性・安全性の向上が期待される製品です。

マグネットクランプの使用用途

1. 産業分野

マグネットクランプは、主に成型機などにおいて、金型を固定し、脱着することに使用されています。成型機が使われる用途は多岐に渡り、

  • 自動車・搬送機器
  • 電機機器
  • 非鉄金属
  • 鉄鋼
  • 電子部品・半導体、メディカルなど

のような、幅広い産業で使用されている装置です。

2. マグネットクランプ導入による効果

マグネットクランプの導入により、下記のような効果が期待されます。

  • 金型交換時間の削減による生産性向上
  • 作業安全性の向上
  • 様々な形状の金型を瞬時に吸着・クランプすることが可能
  • 取付板の統一が不要になり、金型設計の自由度が向上する
  • 金型へのダメージ軽減と機器の長寿命化
  • 省エネルギー化

マグネットクランプを使用せずに金型を固定する場合は、ボルトを手締めするなどして固定しないといけません。何本ものボルトを締める必要があり、時間がかかる上に危険を伴う重労働となります。また、金型補修などの事由による脱着の場合、なるべく速い脱着が必要です。マグネットクランプによる脱着はボタンを押すだけで済み、わずか数秒でのクランプが完了します。このため、作業安全性の向上と生産性の向上に大きく寄与します。

また、マグネットクランプは、油圧・エアなどを使用せず電気のみで動作するため、クリーンな環境での使用が可能な装置です。

マグネットクランプの原理

1. 動作概要

マグネットクランプの模式図

図2. マグネットクランプの模式図

一般的なマグネットクランプは、マグネットプレートの内側に電磁コイル、アルニコ磁石、ネオジム磁石を用いた仕組みで動作します。アルニコ磁石とネオジム磁石は共に永久磁石です。脱磁状態では、アルニコ磁石、ネオジム磁石の磁力線はマグネットプレートの内部のみで形成され、マグネットプレート表面に磁束は発生しません。

マグネットクランプの動作機構

図3. マグネットクランプの動作機構

電磁コイルに0.5〜2秒間通電することにより、アルニコ磁石の磁力が反転して磁力域がプレート外部まで到達するようになります (着磁) 。この磁力によって金型を吸着、すなわちクランプすることが可能です。磁力域は電磁コイルに通電する方法以外では切り替わらないため、再び脱磁する場合も電磁コイルに通電することでアルニコ磁石の磁力を反転させます。通常、120℃程度の高温環境まで使用が可能です。

2. 安全対策

上記の仕組みのように、マグネットクランプは通常の電磁石とは異なる機構で動作します。そのため、万が一停電が発生しても金型が落下する心配はありません。また、マグネットクランプはマシンと接続させて、マシンの停止と連動させて同時に停止することが可能です。

また、着磁力を確認する仕組みとして磁束密度を測定するセンサーが搭載される他、金型密着や剥がれを検知する機能として近接スイッチが搭載されることがあります。これらの装置は、金型の錆や異物などによる着磁力不足や、金型の密着不足を検出し、安全性を確保するものです。これらの装置で異常が検出された場合、場合によっては自動で非常停止するようになっています。また、磁極反転時の電流値を監視する電流センサーや、金型落下防止フック・落下防止ブロックなどが搭載される場合もあります。

マグネットクランプの種類

マグネットクランプには、様々な種類の製品があります。製品によって対象とする成型機の型締力が異なり、300kN程度に対応する製品から、6500kN程度まで様々です。また、プレートの厚みも35mm〜52mm程度まで製品によって異なります。製品によっては、専用の操作盤でリモートでの操作が可能です。

前述した着磁力確認などの安全機能は、製品によって異なり、標準搭載される場合やオプションで追加が可能な場合などがあります。多くの製品は、新規・既設の成型機共に設置が可能です。目的や用途に合わせて適切なものを選定することが必要です。

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