はく離剤

はく離剤とは

はく離剤とは、金属やガラス、プラスチック面など素材に付着している古くなった塗装や塗膜、樹脂、接着剤の除去に用いる薬剤です。

従来、塩化メチレンタイプ (ジクロロメタン) を主成分とするはく離剤が多く用いられてきましたが、最近は環境に配慮したノンクロルタイプが多数開発されています。

はく離剤の使用用途

再塗装時の塗装ムラや塗装剥がれ、塗装後のひび割れなどを防ぐ目的で使用します。

水系、溶剤系、塩化メチレン系の溶剤は素材への影響やはく離箇所、作業工程などを考慮し て選択されます。特に塩化メチレン系は人体や環境への影響が大きいので、使用の際は適切な準備が必要です。

はく離剤の原理

はく離対象である塗膜上に塗布されたはく離剤は、塗膜自体の性状を変え、素材との密着力を損なわせます。大別して2種に分かれ、使用する溶剤により異なる作用で塗膜をはく離可能です。

1. 塩化メチレンタイプ

塩化メチレンタイプは浸透性が高く、塗膜を軟化させてはく離します。錆の懸念のある鉄を素材とする箇所や水洗のできない箇所へのはく離に優れ、常温で使用可能です。

中性タイプや強力な酸性、アルカリ性タイプもあり、労働安全衛生法やPRTR法に該当します。

2. ノンクロルタイプ

ノンクロルタイプは、塗膜自体を溶解させてはく離します。硬化した接着剤などの、水系では対応できない樹脂系塗膜のはく離に適しており、 塩化メチレンタイプより環境に配慮されていることが特徴です。

ただし、刺激臭があり粘性が高いため細部の洗浄性や乾燥性に劣り、消防法にも該当します。

はく離剤のその他情報

1. はく離剤の使い方

はく離剤への浸漬
はく離剤を槽に準備し、表面の塗膜はく離を行いたい素材を浸漬させます。表面全ての塗膜が除去されるので選択的なはく離には対応できません。

通電によりはく離を促進させる手法もあり、めっき加工業者にて主に使用されています。はく離した塗膜成分が液中に不純物として蓄積する為、定期的にはく離剤の更新が必要です。

スプレーでの塗布
スプレー装置にてはく離剤を対象に吹き付ける方法です。表面へ均一に付着させる事が容易ではありません。

はく離剤のロスも多く、不要部への付着も懸念されます。自動化により、ある程度の安定化は見込めますが、手作業での実施には課題が多い手法です。

直接塗布
刷毛塗にて直接対象にはく離剤を塗布する方法です。選択的なはく離が可能であり、必要最低限の使用にて対応できるため、経済的には最も優れています。

2. 医療分野での活用

はく離剤は、医療分野でも応用されています。人工肛門や人工膀胱の手術を受けた患者は、排泄する際の受け皿となるスマート装具を装着します。これは人体の皮膚との隙間から臭い漏れを防ぐため、しっかりと固定されています。これを取り替える際に、はく離剤を使用します。

工業用の塗装はく離とは異なり、医療分野で使用されるものは臭いや人体への影響を懸念し、成分的にも配慮されています。臭いは無臭のものから、柑橘系やミントなどの香りのついたものまであります。成分は皮膚への負担が少ない非アルコール性、シリコン性がほとんどです。オイルを使わないものもあり、使用感で不快になることはありません。

はく離剤の種類も豊富で、用途によって使い分けが可能です。はく離剤が個包装になっているものもあり、すぐに取り出して使用できるため、外出時に重宝されています。また、介護者などのスマート装具を装着した本人以外が使用するために、どの角度からでも塗布できる工夫がされています。

医療用のはく離剤は、その使用目的から「日用品」です。機能性や携帯性など、さまざまな要素に考慮して開発・製造されています。

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