セメント抵抗器とは
セメント抵抗器とは、電子回路部品の一つであり、回路中を流れる電流に対して抵抗となる部品です。
抵抗器には様々な種類がありますが、中でもセメント抵抗器は巻線系の抵抗器に分類されます。これは電気の流れを妨げる抵抗エレメントに、巻線を使用しているものが多いためです。一部、巻線以外の抵抗エレメントを使ったセメント抵抗器もあります。
なお、巻線系の抵抗器は、外側を覆うケースの材質によって分類されています。セメント抵抗以外には、巻線抵抗、メタルクラッド抵抗、ホーロー抵抗があります。
セメント抵抗器の使用用途
セメント抵抗器は電子回路中の抵抗であり、電流の流れを妨げるものです。目的に応じて電流を制限したり、電圧を分圧したり、電流を検出するために使われます。
セメント抵抗器が使用される場合、抵抗の温度が高い、又は湿度が高く抵抗器の劣化が激しいケースが多いです。抵抗器は使用できる電力に応じても分類されますが、セメント抵抗器は中容量クラス (10W以下) の電力回路用に該当します。
セメント抵抗器は、抵抗の周りをセメントで固められているため、耐熱性や耐湿性や耐振動性にも優れています。そのため、多くは屋外の大電力設備などで使用される電子基板に実装されています。
セメント抵抗器の原理
セメント抵抗器は電子回路中における抵抗であり、オームの法則では抵抗として表されるものです。オームの法則は以下の関係式で表されます。
V (電圧) = R (抵抗) x I (電流)
抵抗の単位はΩ (オーム) であり、セメント抵抗器のカタログにも記載されています。セメント抵抗器は、電気抵抗となる抵抗エレメントをセメントで封入しています。抵抗エレメントに電流が流れると発熱するので、この熱が周囲に伝えにくくなるよう、少しずつ放熱させるのが役割です。
なお、抵抗エレメントの多くは巻線抵抗ですが、抵抗値が大きいもの (100Ω以上) には、酸化金属皮膜抵抗が用いられていることもあります。耐環境性能に優れているので、屋外で高温高湿度で振動が激しいなどの劣悪環境において使用されます。
セメント抵抗器の多くは、巻き線タイプの抵抗器であり、構造としてはコイルと同じになります。なので、インダクタンス成分を有しています。この影響が高周波帯で影響されるため、高速スイッチングなどの高速動作をしている回路では、想定外のノイズを発生する可能性があるため、避けた方が無難です。
セメント抵抗器のその他情報
1. セメント抵抗器の長所
セメント抵抗器のケーシングに使われるセメントは不燃性です。高温になっても発火することがないので、基板に直接実装できる点が長所と言えます。セメント抵抗器は耐環境が厳しい条件で、安定した電力用回路として採用するのに適した抵抗器です。
2. セメント抵抗器の短所
セメント抵抗器の多くは抵抗エレメントに巻線を使用しており、巻線はインダクタンスが生じます。高周波の交流回路で使用すると、インピーダンスが上昇することになります。これらの現象により、高速スイッチングなどの高速動作をしている回路では、想定外のノイズを発生する可能性がある点が短所です。
インダクタンスとは、コイルに流す電流を増やそうとすると、コイル自体に電流を流しにくくしようとする働きが生まれ、逆に電流を減らそうとすると、流れる電流を増やそうとする現象です。
インピーダンスとは、交流回路における電圧と電流の比であり、電流の流れを妨げる働きをします。電流の流れにくさを表すもので、直流回路の抵抗に相当するものです。