フィルタープレスとは
フィルタープレスとは、フィルターを用いて圧搾することにより、スラリー液を濾過して固液分離するための装置です。
主に浄水用途で用いられています。構造がシンプルで、比較的処理量を簡単に増やしやすいことが特徴です。製造ライン中に組み込めるので、濾過脱水装置として多く使用されています。
得られる脱水物 (ケーキ) の含水率は非常に低く、固液分離特性は非常に高いです。自動操作式のフィルタープレスも存在し、液充填から濾過まで全自動で実施可能です。
フィルタープレスの使用用途
フィルタープレスは高い固液分離特性から、さまざまな産業で使用されます。下記以外の用途として、食品加工や鉱業が挙げられます。
1. 環境分野
代表的な用途は環境分野であり、廃水処理や大気汚染防止に使用されます。廃水処理プラントではフィルタープレスを使用して固形物質を取り除き、浄化水を生成します。浄化水は排出基準に適合することを確認した後に、海などへ排出されます。
2. 化学工業分野
化学工業では合成化合物の精製、分離、濃縮に使用されます。有機合成においては、反応生成物と反応副生成物を分離するためにフィルタープレスを使用することがあります。
また、精製工程においては不純物を取り除き、製品品質を向上させるために使用されることもあります。
3. 石油化学工業
石油化学工業では、石油製品や化学物質の製造に使用されます。具体的には、石油精製工程などで油中の不純物を取り除くためです。
フィルタープレスの原理
フィルタープレスは、濾布を貼った2枚の鋼板やプラスチック板で仕切られた濾室が複数並んだ構造です。濾布同士の間には空間が設けられており、そこにポンプでスラリー液を流し込みます。濾室内にスラリー液が流し込まれて濾過が進んだ後、さらに圧力をかけて脱水します。
圧力をかける方法は油圧が一般的です。油圧を解除した後に、濾室を開放してケーキを落とします。手動フィルタープレスの場合、油圧による加圧を手動油圧ポンプにて行います。
フィルタープレスの主要部品である濾板と濾布の性質は以下です。
1. 濾板
ポリプロピレン製などの板を使用します。濾布を固定したり圧迫したりすることが役割です。硬い材質でできているため高い圧力に耐えることができ、耐薬品性も優れています。
フィルタープレスの機種によっては濾板の間にエアーを送り込むことで圧力を上げ、濾過速度を高めることが可能です。
2. 濾布
ポリプロピレン 、ナイロン、ポリエステルなどでできた、布状のフィルターです。さまざまなフィルター孔径の製品があるため、スラリーの固形分量や粒子径によって使い分けます。現在のフィルタープレスは、濾布がベルトコンベアー状に移動して固形分を自動排出できる機種が主流です。
フィルタープレスの選び方
フィルタープレスを選ぶ際は、スラリー液の性状や処理速度、含水率などを考慮します。
1. スラリー液の性状
スラリー液の性状に応じて、濾板や濾布の材質を決定します。スラリー液が腐食性の場合はステンレスなどを選定し、高粘度の場合は高揚程の圧搾ポンプなどを選定します。
2. 処理量
処理量も重要な要素の1つです。フィルタープレスの適切なサイズを決定する上で重要な指標の1つであり、フィルタープレスの設計や構造に影響を与えます。処理量を多くするにしたがって、大型化します。
3. 含水率
上記を踏まえて、要求される含水率を確認します。ケーキの含水率を下げたい場合、余分な水分を取り除くのに十分な時間を与える必要があります。
ただし、その場合は処理量が減ってしまうため、必要処理量と要求含水率に応じて設備容量を検討します。
フィルタープレスのその他情報
フィルタープレスの漏れ対策
フィルタープレスはフィルターの縁から液漏れする場合があります。漏れが発生する原因は隙間や過剰圧力、濾布の目詰まりなどです。
濾布と枠の間に隙間が生じた場合、液漏れする可能性があります。シール材で隙間を塞ぐことで、漏れが止まるケースも多いです。また、濾布の濾過速度に対して圧力が高い場合も、処理しきれないスラリーが液漏れする可能性があります。
圧力を下げるか、濾布孔径の最適化が必要です。固形分が濾布に詰まり、濾過性が低下することも液漏れの原因です。濾布洗浄で改善します。スラリー中の固体が多い場合も液漏れするため、上流工程で固形分を減らす必要があります。
参考文献
https://www.nihon-rokasochi.co.jp/filterpress/filtration/
https://kcr.kurita.co.jp/wtschool/052.html
https://www.nihon-rokasochi.co.jp/productspost/163/