DLCコーティングとは
DLCコーティングとは、高硬度、耐摩耗、低摩擦、凝着を起こしにくいなどの優れた特徴を持つ表面処理技術です。
DLCはDiamond like Carbonの略称です。
DLCコーティングの使用用途
DLCコーティングは、主に金属の耐摩耗性向上を目的に処理されます。焼き付き防止や耐久性向上が期待できます。主な使用例は以下です。
1. 自動車エンジンへ耐久性向上用コーティング
2. 切削工具の耐摩耗防止コーティング
3. 産業用ロボットの耐久性向上用コーティング
4. 加工機のシャフト・軸受へのコーティング
DLCコーティングの原理
DLCはダイヤモンド成分と炭素成分から合成されます。アセチレンガスを注入し、高周波・高電圧でプラズマを発生させて炭素と水素に分解し、水素は排出することで合成します。プラスイオン化した炭素はマイナスを帯びた製品に付着し、ダイヤモンドに近い非結晶が製品に表面に生成されます。
DLCコーティングをすると多くの材料に対して摩擦係数が小さくなるため、CO2排出量低減に貢献することができます。
DLCコーティングのその他の情報
1. DLCコーティングの成膜方法
DLCコーティングは、成膜方法によっても特徴が変わります。成膜方法は大きく分けて3種類です。
CVD法
成膜速度がPVDよりも速く、複雑な形状にも可能です。水素を含んだ成膜で厚膜化させることもできます。
PVD法
水素フリーの成膜や高硬度成膜が可能です。基材との密着性が強いく導電性の物にも対応することができますが、厚膜化が難しいです。
プラズマイオン注入法
室温成膜が可能でゴム・樹脂・セラミックにも成膜することができます。
2. DLCコーティングのデメリット
DLCコーティングはメリットばかりではなく、下記のようなデメリットも存在します。
1. 欠けやすく、破片が混入する
2. 生地との密着性が悪い
3. 最大2ミクロン程度の被膜に限定される
4. 水素を含む量が多くなるほど硬度は下がる
3. アルミニウムへのDLCコーティング
アルミにDLCコーティングをすることで、耐摩耗性と低摩擦性を与えることが可能です。この特徴により、機械部品の軽量化などが可能となります。アルミニウム合金は酸化しやすく多種の元素が含まれるため、DLC薄膜と基材との境界面に合った中間層を選ぶことが必要です。アルミ合金へのDLCコーティングの応用事例としてはエンジン部品へのコーティングがありますが、炭素とアルミニウムの親和性の低さから生じる密着性の低さが課題として挙げられています。
4. DLCコーティングとモリブデン系高滑油
摩擦調整剤であるジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンを配合したオイルを使って摺動させた場合に、DLCコーティングが摩耗するという事例が報告されています。乾いた環境で低摩擦を示すDLCコーティングですが、そのまま境界滑油として使用した場合は極低摩擦を実現することは少ないです。二硫化モリブデン結合幕を使用した場合はドライで低摩擦ですが、境界滑油で使用した場合は耐摩耗性が低いため摩擦に対する耐久性があまりありません。
5. DLCコーティングの剥がれ
DLCコーティングはアルミニウムや真鍮などに処理は可能ですが、高荷重環境ではDLCコーティングが剥がれてしまうことがあります。剥がれることを避けるためには、基材が高硬度であることが必要です。DLCコーティングの剥がれを避ける技術として、イオン注入があります。この方法をとることで、成膜イオンが基材表面に入り込み成膜された膜との高密着を実現できます。
参考文献
https://www.jndf.org/nakama/dlc.html
https://60you1.com/diamond-like/
https://www.nanotec-jp.com/aluminumalloyICF
https://www.jsme.or.jp/publish/kaisi/011002t.pdf
https://www.juntsu.co.jp/coating/coating_kaisetsu03.php