カルシウム剤とは
カルシウム剤とは、農作物の生育に不可欠な栄養素であるカルシウムの欠乏を防ぐため、農作物のカルシウムを補給するのに使用される薬剤のことです。
農業分野でカルシウムは植物体の細胞組織を強くし、組織づくりに大切な成分です。さらに、土の酸性化を中和し適切なpH値に調整する働きもあります。チッソ、リン酸、カリに続く農作物の生育に必要な中量要素と言われています。
農作物のカルシウムが欠乏すると、芯腐れや変形果などといった生理障害が起こります。カルシウム剤を農作物に施すことによって、そのような生理障害を防ぐことが可能です。
カルシウム剤の使用用途
カルシウム剤は、農作物中のカルシウムが欠乏するのを防ぐために、農作物の植え付け前に土壌に混和したり、葉面に散布したりして施します。カルシウム剤の主な使用目的は以下の4つです。
1. 生理障害の予防
カルシウム剤を農作物に使用することによって、尻腐れ果や変形果、芯腐れやチップバーン、しみ症などといった、果菜類・葉菜類・根菜類などの農作物に起こる、カルシウム欠乏による生理障害を防ぐことができます。
高温や乾燥など厳しい気象条件が続く時期などは、より生理障害が助長されるので、そのようなときはこまめに施すことが望ましいです。また、芯腐れやチップバーンは収穫後に中身を切ってみないと分からないことも多いので、予防で早い時期から施すと効果的です。
2. 農作物の品質向上
カルシウム剤は、果実や葉物野菜の日持ちを向上させる効果や、豆類などの農作物の生育を促進する効果、さらに農作物の収量を増加させる働きがあります。これはカルシウムが細胞組織を強化し、農作物を強く成長させるためです。
3. 病害虫の予防
カルシウム剤を農作物に使用することによって、病気や害虫の予防の効果があります。カルシウム剤により、植物の細胞が強化され、病気に対する抵抗力が高くなったり、虫がつきにくくなったりします。
4. 根の生育促進
カルシウム剤には、植物の根の生育を促進させる効果があります。植物の根が発達すると、より多くの水分や肥料分を吸収できるようになり、植物全体の生育促進につながります。
また、根の張りがよくなると、風で植物が倒れてしまうリスクを下げる働きもあります。
カルシウム剤の特徴
長所
- 葉面散布で使用できるため、散布したいタイミングで散布が可能 (カルシウム欠乏が出てしまった後や高温、乾燥など厳しい気象条件のとき) 。
- 農薬でなくても、病害虫の予防ができる。
- 農薬と混合して使用できるものもあるため、作業の省力化につながる。
短所
カルシウム剤の種類
カルシウム剤は形状により次のような種類に分けることができます。
1. 固体状カルシウム剤
固体状のカルシウム剤は、粉状と粒状のものになります。固体状のものは基本的に、農作物の植え付け前に土壌に散布、混和して植物の根からカルシウム分を吸収させます。
生育の初期から吸収させることができるので、生育初期の生理障害予防や根の生育促進に効果的です。
2. 液状カルシウム剤
液状カルシウム剤は、液体のカルシウム剤を水で希釈し、農作物の葉面に散布して使用します。葉面に散布して吸収させるので、ある程度農作物を成長させてから使用するのがポイントです。
固体状カルシウム剤と比べ、農作物への吸収が早いため、追肥やカルシウム欠乏症状が出てしまったときの対処に効果的です。また、農薬散布時に混ぜて使用できるものもあるため、作業の省力化につながります。
カルシウム剤のその他情報
カルシウムが不足する要因
土壌のカルシウム分が不足している以外の理由で、農作物にカルシウム欠乏が出る場合があります。それは、土が乾燥しすぎているときです。カルシウム分やその他の肥料分は土の中の水分に溶け出して、根から吸収され植物内に入ります。
そのため、土の中の水分がほとんどない状態だと、カルシウム分を吸収できないためカルシウム欠乏が起こる可能性があります。また、強い肥料で植物の根が肥料やけ (水分や養分を根から吸収しにくくなる) を起こしたり、害虫などに根を傷つけられたりしたときも、根から吸収できなくなりカルシウム欠乏を起こす可能性があります。
このような場合は、液状カルシウム剤で葉面散布を行い、カルシウム分を補給することが有効です。