ECメーターとは
ECメーターとは、農業の分野において土壌の塩類濃度、土壌や溶液中に溶け出ている肥料成分のイオン量 (特にチッソ分) を知るための機器です。
肥料を与える前時点での基準のEC値は、作物により多少の誤差はありますが、0.20mS/cm〜0.50mS/cm程と言われています。ECは電気伝導率 (Electrical Conductivity) のことで、電気の流れやすさを表す物性量です。精製水と液状肥料では、液状肥料にリン酸やカルシウムなど電気を通す物質が含まれているので電気が流れやすい (EC値が高い) と言えます。
また、EC値はS/M (ジーメンス毎メートル) の単位を用いて表します。土壌・培養液中には植物残渣や微生物などの有機物と鉱物や塩類などの無機物が含まれます。無機物は溶液中で電離して、陽イオンと陰イオンに分かれます。
土壌・培養液中にイオンが存在するとそこに電気が流れ、ECメーターによる測定が可能です。肥料濃度が高いと土壌・培養液中のイオン量も多く、電気伝導率が高くなります。ECメーターはこの原理を利用して、肥料濃度を測定します。
ECメーターの使用用途
ECメーターは、主に畑の土壌診断や水耕栽培の培養液作りに使用されます。 農作物に肥料を与える前の肥料残存量が分かっていれば、肥料を適量与えることができます。
肥料残存量が多い場合は、ソルゴーやひまわりなどの緑肥を使用して土壌から肥料分を減らし、与えすぎを予防することも可能です。反対に肥料残存量が少ない場合は、足りない量に応じて適量与えられるため、ECメーターは土壌診断に用いられています。
また、土壌の塩類濃度が高すぎると、植物根の水分吸収を阻害する可能性があり、低すぎると必要な成分が不足し生理障害を起こす可能性があります。ECメーターを活用し土壌診断することで、作物の生育障害を防ぎ、適量の肥料を適切なタイミングで与えることが可能です。
1. 露地栽培
キャベツやブロッコリー、ほうれん草などの露地野菜栽培では、元肥量や追肥の時期、量を決めるため、土壌診断をする際にECメーターを活用しています。
2. 水耕栽培
水耕栽培で野菜を栽培するときにはECメーターが欠かせません。土壌の代わりとなる液体肥料の濃度や循環させる水に含まれる養分濃度などを測定し、濃度を決めるためにECメーターを活用しています。
3. ハウス栽培
イチゴなどハウスで高設栽培 (地上から1m程の高さに栽培ベッドをおいて、そのベッドの上で栽培する方法) では、培養液の濃度管理にECメーターを活用しています。イチゴの培養液管理は着果数など影響がでるため、ECメーターを頼りに管理されている農家さんも多いです。
ECメーターの特徴
長所
土壌診断を好きなタイミングで行うと、栽培の効率化に測定値をみて栽培方法を変更できるため、栽培のマニュアル化することができます (専門の知識がなくても栽培管理ができる) 。また、適量の肥料管理ができるので肥料の無駄の削減にもつながります。
短所
ECメーターや測定に必要な精製水、校正液 (必要でないものもある) 購入のコストがかかります。ハウス栽培や水耕栽培で培養液濃度を常時測定している場合、ハウスや循環システムごとにECメーターが必要になるため、よりコストがかかります。
ECメーターの種類
ECメーターは種類により、使い方も異なります。大きく土壌に直接差し込むダイレクト型と測定したい検体の上澄みを摘出し測定する上澄み測定型に分類できます。
1. ダイレクト型
ダイレクト型のECメーターは土壌に先端を直接刺し、その後上部に測定値が表示されます。使用方法が簡単ですぐに測定可能です。測定の時に差し込む付近の土壌が少し湿っているとより正確な測定値が出ます。より手間をかけず、早く測定したい方に向いています。
2. 上澄み測定型
上澄み測定型は測定したい土壌を容器に取り、そこに水を加えます。容器の蓋をしっかりとして1分程振って中身を混ぜ合わせ、10分程おいておきます。そして、できた上澄み液をECメーターで測定します。ダイレクト型のECメーターよりは時間はかかりますが、正確な測定値が出せるのが特徴です。