MPUとは
MPU (英:Micro Processing Unit) とは、プログラムに従って数値演算処理や論理演算処理を行う半導体デバイスです。
マイクロプロセッサとも呼ばれ、コンピュータの中心的な役割を担います。コンピュータが生まれた頃の半導体技術では1チップ上に集積できるトランジスタ数は数千個でしたが、最近では10億個のトランジスタを集積できるようになっており、MPUの中に取り込まれる機能も増えることで機器の小型軽量化や低消費電力化に大きく貢献しています。
MPUの使用用途
MPUは全てのコンピュータに搭載されています。コンピュータはこのMPUを中心に、メモリ、SSD、HDDなどの記憶装置、キーボード、マウス、モニター、スピーカーなどの入出力装置から構成されます。
現在ではインターネット接続のためのインターフェースを標準で備え、更にグラフィックス処理用のGPU (英: Graphics Processing Unit) や、AI処理用のベクトルプロセッサを搭載することもあり、3DCGや各種の認識等にも用いられます。
MPUに似たデバイスとしてMCU (英: Micro Controll Unit) があります。MPUがコンピュータを中心とする汎用的な製品に搭載されるのに対し、MCUはAV機器を代表とする家電製品、産業用機器、自動車などに搭載され、機器の制御を行うという限定的な用途に用いられます。
近年ではスマートフォンに代表されるように限定的な用途の装置上でユーザプログラムを実行する製品も増え、MPUとMCUの境界は曖昧になってきています。
MPUの原理
MPUの中には中央処理装置CPU (英: Central Processing Unit) があり、メモリから読みだした命令とデータを処理します。また、メモリ管理ユニットを内蔵して、プログラムから見える論理アドレスとハードウェアから見える物理アドレスの変換を行い、更にキャッシュメモリを内蔵することでメモリアクセスを高速化し、プログラム処理時間を短縮しています。
MPU全体は内蔵されたクロックジェネレータで生成されるクロックで動きます。数GHzのクロックで動作するMPUもあり、この場合は1秒間に数十億回の計算が可能です。
MPUでの処理結果は、出力装置であるモニター、スピーカー、プリンタ等にも送られ、それぞれのデバイスの動作を制御します。
MPUの種類
MPUはアーキテクチャによりCISCとRISCの2種類に大別されます。アーキテクチャは設計思想を表し、具体的には命令セットを指します。
命令セットとはMPUが直接読み込む命令のセットで、0と1で表現されます。通常のプログラミングでは高級言語と呼ばれるプログラミング言語を使用しますが、OSのコンパイラによって0/1で表現される命令セットに変換され、MPUで実行されます。
1. CISC
CISC (英: Complex Instruction Set) は1つの命令が一連の複雑な処理を実行する方式で、できるだけ少ない命令回数で処理を済ませることで、マイコンのパフォーマンスアップを狙う演算方式と言えます。
中にはシンプルな処理を実行する命令もあり、その場合は命令のビット長を短くするため可変長命令セットとも呼ばれ、プログラムサイズのコンパクト化に繋がります。このため、あらかじめ決められたプログラムだけを内蔵ROMに書き込んで処理を実行する制御用途向けで多用されます。
2. RISC
RISC (英: Reduced Instruction Set) は1つの命令が簡単な処理しか行わないため、1つ1つの命令実行速度が高速になります。クロックの動作周波数を上げて命令実行を多数回行うことでマイコンのパフォーマンスアップにつなげる方式です。RISCでは命令のビット長は固定されており、固定長命令セットとも呼ばれ、コンピュータなどの汎用的な用途向けです。
なお、上記2つのタイプより見かける事は少ないですが、128ビット以上の命令長で,複数の命令を同時に高速実行するVLIW (英: Very Long Instruction Word) というタイプのMPUもあります。
MPUのその他情報
MPUの進化
MPUは半導体技術と一緒に進化してきました。世界で最初のMPUは日本人が作った4ビットのIntel4040です。10umのプロセスルールで製造されており、2,200個のトランジスタが集積され750KHzで動作しました。
最新のMPUは数nmのプロセスルールで製造され、数十億個のトランジスタが集積され数GHzで動作します。半導体技術は原子のサイズの壁に近づいていますが、これまで平面上に形成されていたトランジスタを縦方向にも形成する技術開発により進化を継続しようとしています。
一方、半導体で作られているMPUを光デバイスで実現しようとする動きや、更には量子プロセッサの実現に向けても研究開発が進められており、今後もMPUの進化が続くと考えられます。
参考文献
https://www.tel.co.jp/museum/exhibition/principle/microprocessor.html
https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/innovation/mpuworks.html
https://ednjapan.com/edn/articles/1404/07/news001.html
http://mh.rgr.jp/memo/mp0102.htm
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2006/26/news067.html