テレセントリックレンズとは
テレセントリックレンズとは、主光線と光軸が平行になるレンズのことです。このレンズを用いて撮影することで、画角がなく視差による誤差のない画像を取り込むことができます。凹凸や奥行きのある対象物でも一定の倍率で読み込むことが可能で、精密処理に適しています。また、立体感のない画像を作ることができるので画像の中心と端での歪みを生じさせず、微小な傷の検査やガラス面のような光を反射しやすい物体のごみ検出に利用されます。
テレセントリックレンズの使用用途
テレセントリックレンズは様々な用途で使用されます。例えば立体物の検査です。ピンなどの立体的な部品を通常のレンズで撮影すると、中心と端とで様子の違う形の画像になります。これは視差によって対象が歪められているからです。しかし、テレセントリックレンズを用いることで歪みがなく正確な画像を読み取ることができます。また、ごみや傷の検査でも使用されます。視差による見逃しを防ぐことができることはもちろん、ごみや傷を見つけやすいからです。テレセントリックレンズを用いることで光の反射率をコントラストの差として読み取ることが可能で、微細なごみや傷を発見できます。
テレセントリックレンズの原理
テレセントリックレンズは主光線と光軸が平行であることが特徴的ですが、レンズの使い方によって主に三種類に分けられます。
- 物体側テレセントリックレンズ
物体側にレンズが置かれ、物体側のみ主光線が平行な構造をしています。対象物が前後しても大きさが変化せずに正確に測定することができます。比較的小型に設定することも可能なタイプになります。 - 像側テレセントリックレンズ
像側にレンズが置かれ、像側のみ主光線が平行な構造をしています。対象物が前後すると像の大きさや寸法は変化してしまいます。しかし、像面で明るさが均一になることがメリットです。 - 両側テレセントリックレンズ
レンズが二つ使われ、物体側でも像側でも主光線が平行な構造をしています。対象物が前後しても大きさが変化せずに正確に測定することが可能で、物体側テレセントリックレンズよりも精度が高いです。しかし、大型になってしまう点とコストが高くなってしまう点がデメリットです。
テレセントリックレンズのデメリット
テレセントリックレンズのデメリットは、レンズが大口径化する可能性が高いという点です。CCD/CMOS素子面に対して垂直に入射する光線のみを結像させますので、その系に適したレンズ径は素子寸法に依存します。
また、撮像対象が小さい場合は応じてレンズ径も小さくて済みますが、対象のサイズに相関してレンズ径は大きくならざるを得ません。そのため、スペース的な制約が大きい箇所にテレセントリックレンズを用いることは困難です。
また、両眼視差などを利用してカメラの剛体変換を行う系(たとえばVRやAR)には適していません。理由は奥行き情報が失われるからです。平行光のみを抽出しますので、奥にある物体も手前にある物体も同じ倍率で画像として取り込んでしまいます。
これによって、3次元剛体変換には適していません。メリットも使い方によればデメリットとなりえますので、注意が必要です。
テレセントリックレンズのキャリブレーション
ここで一点注意したいのは、テレセントリックレンズが理想的なレンズ、というわけではありません。
誤差がないと表現したのは、あくまで通常のレンズと比較して画角に起因する誤差が低減できるから理想に近い条件である、という意味です。たとえば、ディストーションに着目した場合、レンズにも依るので一概には言えませんが、±0.5%の光学ディストーションが生じるのが一般的です。
もちろん、通常レンズと比較してディストーションレベルが小さいことに変わりはありません。通常レンズだと±20%以上もざらに存在します。ディストーション一点に着目した場合の性能差は一目瞭然です。
繰り返しになりますが、テレセントリックレンズを用いるとディストーションがゼロになるわけではないことを念頭に置いてください。もちろん、±0.5%の誤差が性能に影響を与えないならディストーション補正は必要なく、その系にとっては理想的なレンズであることにほかなりません。
しかし、これが性能に影響を与える場合は、通常レンズと同様にソフトウェアもしくはハードウェアでのディストーション補正が必要となります。
参考文献
https://www.optart.co.jp/2017/02/10/telecentric-lens
https://www.edmundoptics.jp/knowledge-center/application-notes/imaging/advantages-of-telecentricity/ https://jp.mathworks.com/help/vision/ug/camera-calibration.html