農ポリとは
農ポリとは、主にマルチングやトンネル栽培、ハウス内トンネル栽培で用いられるシート状の資材のことです。
農ポリは耐候性があるため、作物を直射日光や冷たい風、雨から守る効果があります。農業用フィルムシートは軟質と硬質に大別できますが、農ポリは軟質に区分されています。一方の硬質フィルムは、屋根型ハウスなどに使用されます。
農ポリの使用用途
農ポリは汎用性が高く軟質なので、小型のトンネルフィルムやビニールハウスのカーテンなど、多用な農業用資材として使用されています。また、畝に被せてマルチング材として使用すれば、雑草防止・泥はね防止・霜除け・保温・保湿などにも役立ちます。
風で農ポリがはがれないよう、土やハウスバンド、クリップなどで押さえると良いです。
農ポリの特徴
農ポリは農業用ポリエチレンの略称で、原料は軟質ポリエチレンフィルム素材で作られています。
農ポリの仲間である農PO (商標登録) との違いは素材にあります。農POは、ポリエチレンとポリ酢酸ビニールを多層成形しているのが特徴です。
長所
ポリエチレン製の農ポリの厚みは0.02mm~0.1mm程度と大変薄いものの、強度・耐久性・耐塵性・透明性に優れているのが長所です。2つの素材を組み合わせた農POは上記の長所に加え、保温性・防滴性・防霧性にも優れています。
また、ほかの被覆材よりも安価で、農ビ (農業用ビニール) の半分ほどの価格です。べたつきが少なく軽いため、取り扱いが楽なのもメリットといえます。
短所
温度上昇効果が期待できる一方で、農ビほど保温性は高くありません。農ポリは十分な強度があるものの厚みが薄く伸縮性は少ないため、強く張りすぎないよう注意が必要です。
農ポリは農薬などに含まれる硫黄に弱い性質がありますが、農POでは耐イオウ性機能が付帯した製品も開発されています。
農ポリの種類
農ポリは、トンネル栽培に使用するもの、マルチング栽培時の雑草避けなどに使用するもの、着色されたもの、特殊加工されたものなど種類が豊富です。また、マルチ用には透明、黒、シルバーなど複数の色があり、穴が空いているタイプやサイズもあります。
メーカーによってさまざまな種類があり名前も異なりますが、代表的な農ポリの種類をご紹介します。
1. トンネル栽培用の一般農ポリ
野菜や花、水稲育苗のトンネル栽培には、軽量で丈夫な一般農ポリが便利です。ブドウやサクランボといった果実の雨よけや夏場の日射しをやわらげる際には、耐候性を強化した農ポリが向いており、長期間使用する場合は農POが多用されます。
2. マルチ用の農ポリ
マルチ用に使う農ポリには、透明・黒・黒白・緑・シルバーなど、様々な色があります。透明タイプのマルチシートは光を透しやすいので、真夏の土の消毒や地温を上昇させたい作物に向いています。
黒や黒白タイプは地温上昇を抑制するため、夏場の使用や低温性作物にも有効です。緑のマルチシートは雑草除けと虫除けを兼ね備えており、農作業を軽減できます。
シルバーマルチは光の反射効果で害虫を寄せ付けにくく、低農薬栽培でも活用されています。
3. シルバーポリ
シルバーポリは、水稲などの育苗や接ぎ木栽培などに用いられます。一般的な農ポリと比較して温度管理性に優れ、べたつきにくいのが特徴です。
遮光性が高い製品や、片面に低発砲シートを溶着加工したシルバーポリも活用されています。
4. ハウスなどで使う農ポリ
農ポリには、ビニールハウスの内張カーテンとして使われるタイプもあり、さまざまな工夫がなされています。例えば、特殊な微細孔加工や塗布無滴処理が施されたタイプであれば、水滴がボトボトと落ちにくいため、作物が濡れることによる病気の予防に効果的です。
ほかにも、フィルムとフィルムの間に空気層を作り、夜間外気温に対して4度ほど保温できるハウス用農POや、長期間の展張に適するよう特殊配合された塗布型農POも販売されています。
農ポリの選び方
農ポリは、トンネル栽培に用いるのかハウス用資材に用いるのかなど、使用用途で選ぶのが基本です。また、無公害の特殊農ポリや、重金属・塩素を含まず、焼却時に有毒ガスを生じない農ポリ、生分解性が高い農ポリなど、環境に優しい製品に着目して選ぶのもおすすめです。
農ポリのその他情報
1. 農ポリの規格
農業用を目的とする農ポリには、JIS規格で厚さ・寸法・材質・強度などの規格が定められています。厚さは1種の0.1mmから5種の0.02mmまで、5種類の区分があります。
寸法は幅950mm×長さ50mに始まり、幅1,800mm×長さ100mまで複数の区分があるものの、規格以外の寸法を使用しても差し支えないと定義されているので、実質メーカーに任されています。
2. 農ポリの活用
農ポリは農業用資材ではありますが、アウトドアでもユニークな使われ方がされています。地面からの湿気をシャットアウトできるとして、キャンプ時のグランドシートとして使用するケースがあります。
ほかにも、アウトドアで防風や雨露を防ぐタープ代わりにするなど、農業以外の場面でも農ポリは活用されています。