イオンプレーティングとは
イオンプレーティングとは、真空中で物質を気化させ、イオン化を経て基材表面へ薄膜を生成する表面改質技術です。
イオンプレーティングでは、プラズマを活用して物質をイオン化・活性化し、基材へ高エネルギーで衝突させます。一方、基材に負電位を与えることで、イオン化された粒子を効果的に引き付け、緻密で強固な密着性を持つ膜が得られます。
イオンプレーティングの特長は、従来型の真空蒸着と比べて成膜温度を抑えられるため、基材へのダメージを最小限に抑制できることです。また複雑な立体形状を持つ基材でも均一な成膜が実現でき、さらに反応性ガスとの組み合わせにより、窒化物や炭化物といった化合物薄膜の形成も可能です。
イオンプレーティングの使用用途
イオンプレーティングは、強固な密着力と優れた耐久性を備えた薄膜を実現できることから、産業界で広く採用されています。主な適用分野は以下のとおりです。
1. 装飾用途
美しい金属の輝きや多彩な色調を実現できるイオンプレーティングは、装飾目的で幅広く採用されています。時計のケースやバンド、眼鏡フレーム、装飾品などの表面改質に用いることで、摩耗や腐食への抵抗力を高めつつ、傷つきにくい魅力的な外観を実現します。また、多様な色調表現ができるためデザイン性を重視する製品製造にも適しており、製品の価値向上に貢献します。
2. 工具・金型用途
工具・金型用途においては、工具の耐用年数延長と加工精度の改善を目指して活用されています。ドリルやエンドミル、タップなどの切削工具に硬質膜をコーティングすることで、摩耗への抵抗力を飛躍的に高めることができます。金型においては、離型性や耐摩耗性、耐食性が改善し、金型の長寿命化を実現できます。
3. 機械部品用途
自動車部品や航空機部品などの機械部品用途では、イオンプレーティングは、摺動部品の摩擦低減、耐摩耗性向上に利用されています。例えば、エンジン部品や軸受などにイオンプレーティングを採用することで、部品の寿命を延ばし、燃費の改善が期待できます。過酷な環境下で使用される部品の信頼性を高め、機械全体の性能を最大限に引き出すには、イオンプレーティングによる耐食性・耐熱性の付与が重要です。