石鹸膜流量計とは
図1. 様々な流量計
石鹸膜流量計とは、流量計の一種で、測定を行う流量を石鹸膜により計測する方式の流量計です。
流量を測定する測定器を流量計と言い、その流量計には様々な種類があります。流量の計測の仕方によって種類が分かれており、超音波によって測定する超音波式流量計や圧力差を測定することによる差圧式流量計、管路内に電熱線を置き、流体によって奪われる熱量が流量に比例することから流量を計測する熱線式流量計など様々です。
石鹼膜流量計は測定流量は少量ですが、精度が高く安い流量計です。最近では、すべての操作がボタン1つで自動化されたり、大気圧補正や温度補正を自動で演算してくれたりする電動式の石鹼膜流量計も販売されています。
石鹸膜流量計の使用用途
石鹸膜流量計は、微小なガスの通気量や漏れ量などの測定、また各種流量計の校正を行うために用いられます。測定するためのガラス管を細くすることで、さらに極微小な測定を行うことが可能です。
石鹸膜流量計の特徴として、正確にガスの流量が測定ができる点や、微小なガスの流量を測定することができる点などが挙げられます。このような特徴を活かした用途が多くあります。
石鹸幕流量計は小型で構造が簡単でありながら、流れているか気づかないような微小な流量を目で見える形で測定できることも利点です。流れは目に見えないものですが、それが確かに流れていることを目で確認できます。
石鹸膜流量計の原理
図2. 石鹼膜流量計の原理
石鹸膜流量計は、機器内部にあるガラス管内の内面に石鹸膜を形成します。ガラス管内に張った石鹸膜に、被測定気体を吹き付けることで、その流速により膜が移動します。ガラス管は既知の体積であるものを使用するため、ディテクタで石鹸膜の移動時間を測定することで、その時の大気圧・気温等を含めて被測定気体の流量を算出することが可能です。
石鹸膜流量計のガラス管の直径を細くすると極微小の計測が行えるようになりますが、ガラス管の長さ分の移動でしか計測ができないため、連続計測などができなかったり、石鹸膜を測定に使用することから石鹸膜が割れてしまうような大きな流量を測定することが難しかったりするのがデメリットです。
図3. 大気圧や温度の補正
石鹸膜流量計を用いる際に必要な注意点は、石鹸膜を用いる点からガスが湿潤することで体積変化が生じたり、ガスによっては石鹸膜を透過したりするなどの問題が発生する場合もあることです。特に、水素ガスなど軽いガスには注意が必要です。その他、精密測定のためには図3の式のように大気圧補正や水蒸気圧補正などを行和なければなりません。
石鹸膜流量計のその他情報
1. 石鹸膜流量計のメンテナンス
石鹸膜流量計は他の流量計に比べると、メンテナンスはほとんど必要ありませんが、簡単なメンテナンス作業が発生します。
石鹸液の補充
石鹸膜をつくる液が少しずつなくなっていくため、液量を確認して補充する必要があります。補充液は各メーカーから販売されてます。
ガラス管の洗浄
ガラス管は空気中のごみなどによって次第に汚れてくるため、定期的な清掃が必要です。
- 石鹸液を全部排出する
- ガラス管より長いビニルチューブをガス入り口に接続
- ビニルチューブより水を注入し、ガラス管内を満たす
- しばらく放置した後、水を排出
- 石鹸液を補充する。
そのほか、手動タイプならエアポンプの取り換え、電動式ならパルスモーターなどの交換が数年ごとに必要な場合もあります。
2. 石鹸膜流量計の使い方
各メーカーによって少し異なる場合もありますが、おおむね以下のような手順で使用します。
- 最初に配管や配線、セットアップを行います。
- 石鹸液を使って湿らせます。
- 温度や大気圧などを設定し、校正を行います。
- 測定を始めます。
ガラス管の中を湿らせなければ、石鹸膜をつくっても消滅してしまいます。湿らせる方法として、手動のものでは石鹸液で直接濡らしたり、自動化されたものでは石鹼膜生成を繰り返し生成したりする方法が挙げられます
使いたいときに手軽に使うことができるため、利便性の高い流量計です。細かい手順は各メーカーの説明書を読むようにしてください。