黄銅とは
黄銅とは亜鉛と銅の合金であり、真鍮とも呼ばれます。青銅と並んで最も一般的な銅合金のひとつであり、その比率や金属組成によってさまざま鋼種を有しています。最も一般的な組成である銅65%、亜鉛35%の65/35黄銅のほかに、イエローブラスとも呼ばれる七三黄銅、レッドブラスとも呼ばれる丹銅(亜鉛の含有量が5~20%)、海軍黄銅とも呼ばれるネーバル黄銅(錫を少量添加)、六四黄銅、快削黄銅、鍛造用黄銅などさまざまな種類の黄銅が、その用途に応じて使用されています。
また黄銅の歴史は古く、紀元前20世紀ごろから貨幣や武器に用いられている記録が残っています。これは黄銅の持つ金にも似た外観の美しさ、加工の容易さ、耐食性や剛性の高さなどによるものであり、現在でもさまざまな用途に用いられる重要な合金であるといえます。
黄銅の使用用途
黄銅はその金属比率、添加金属種によって大きく性質が異なるため、非常に幅広い使用用途を有する合金です。比較的柔らかな亜鉛の含有率15%未満の鋼種は、貨幣やメダル、ファスナーや装身具などに用いられます。身近な用途としては金管楽器の多くは黄銅から作られており、ブラスバンドの名称にもあるブラスは黄銅の英語名を由来としています。亜鉛の含有率15%以上の鋼種は強さと延性、展性のバランスによってさまざまな用途に使い分けられますが、代表的な用途としては日用品、自動車や船舶用の部品、ボルトやナットなどが挙げられます。
また電気伝導性の高さを利用してコネクタやコンセントなどに、非磁性である特性をいかして電気機器や自動車計器に、熱伝導性の高さを利用して熱交換器などにも使用されます。さらに特殊黄銅と呼ばれる亜鉛、銅以外の元素を添加した例として、錫を添加したネーバル黄銅は耐海水性に優れるため船舶やシャフトなどに、鉛を添加した快削黄銅は歯車やネジなどの加工が必要な用途に用いられています。
黄銅の特徴
黄銅は亜鉛と銅の合金であることから、その特徴は金属比率や添加金属種によって変化します。一般的に亜鉛含有率が高いほど黄色味を増し、硬度も増加していきますが、脆くなり価格も高価になります。また黄銅は金属比率によらず、電気伝導度が高い、熱伝導率が高い、非磁性である、メッキ加工が容易であるといった特徴を有しています。
その他の特徴として、熱間鍛造性に優れているという点があげられます。これは黄銅が比較的低い融点を有していることに由来しており、青銅などの他の合金と比較しても鋳造に用いやすい合金であるといえます。黄銅の融点は900℃程度ですので、鍛造でも鋳造でも、比較的低い温度で複雑な加工が可能となります。
さらに展延性にも優れており、叩き伸ばすことでも加工が容易であること、非磁性であるのでリサイクル・分別が容易であること、叩いても火花が出ないため危険物の取り扱い所での工具に使用可能であること、耐食性が比較的高く、錆びにくいことなど、非常に多くの有用な特徴を持つ合金です。