磁性流体

磁性流体とは

磁性流体

磁性流体とは、2~3nmの界面活性剤でコーティングし、油や水などの媒質で安定に分散させた液体です。

マグネタイトなどに代表される磁性微粒子です。磁性体の特徴である強磁性と液体の性質である流動性の、二つの要素を兼ね備えています。

磁性流体は永久磁石などによって磁場が与えられると、その磁場の方向や大きさによって、位置や向き、形などを変化可能です。また、変化する磁場が与えられると、流動する特徴もあります。さらに、磁性流体が磁場中に置かれると、その磁場の強さに応じて、見かけ上の粘度や比重が変化します。

磁性流体の使用用途

磁性流体の最も広く普及している用途は、磁性流体シールです。磁性流体シールは、磁石によって回転軸と磁極の間に磁力線が作られ、その磁力線に沿って磁性流体が保持されます。HDD内の帯電を防止する防塵シールや半導体を製造する装置に使われる真空シールなど、幅広く活用されています。

また磁性流体は、スピーカーやダンパーとして、広く利用可能です。とくに最近では、磁性流体が封入されたダンパーを利用したショックアブソーバなど、自動車にも磁性流体が使用されています。

さらに医療分野で磁性流体は、がん診断の造影剤などに利用されています。 

磁性流体の原理

磁性流体に含まれているマグネタイトは、磁場中に置かれた時のみ、磁石と同様の振舞いを見せます。そのため磁性流体は、磁場がない環境下では通常の流体として働き、磁場が存在する環境では磁石のような動きが可能です。

磁性流体に用いられている磁性粒子は、磁石を近づけると磁石に引き寄せられます。その際に、磁石のN極-S極に構成される磁力線に沿って配向可能です。この配向する力は、磁性流体が有している界面張力と拮抗するため、磁性流体の表面は鋭い見た目になり、この現象をスパイク現象と呼びます。

磁性流体の金属微粒子であるマグネタイトは、純金属ではありません。マグネタイトは既に酸化された状態の超微粒子であり、空気にさらされるとさらに酸化して、ヘマタイトへと変化します。ヘマタイトは磁性を帯びておらず、磁性流体として働かなくなります。磁性流体としての働きを持続させるためには、空気にマグネタイトが触れる前に、界面活性剤などによるコーティングが必要です。 

磁性流体の種類

一般的に磁性流体は、溶媒の種類で分類可能です。具体的には、炭化水素油ベース磁性流体、水ベース磁性流体、ふっ素油ベース磁性流体などが挙げられます。 

ベース液の具体例は、水、イソパラフィン、アルキルナフタレン、パーフルオロポリエーテルなどです。ただしどの流体でも磁性流体にできるわけではありません。ベース液に対応している界面活性剤が必要で、目的や用途に合った選択が重要です。

磁性流体は凝集法 (還元法) 、熱分解法、物理気相成長 (PVD) 法、レーザー蒸発法、化学気相成長、活性液面連続真空蒸着法などで製造可能です。例えば活性液面連続真空蒸着法では、回転した真空ドラムへ界面活性剤と油を加えて、金属を2,000°C付近に熱するための蒸発源をドラムの中心に配置して、微粒子を製造します。

磁性流体の構造

磁性流体は磁性コロイド溶液です。マンガン亜鉛フェライトやマグネタイトのような強磁性微粒子、表面を覆う界面活性剤、水や油などのベース液の3種類で構成されています。磁性流体中の強磁性微粒子は、ベース液と界面活性剤の親和力によって凝集したり、界面活性剤同士の反発力によってベース液中で沈降したり、安定した分散状態を保っています。

強磁性微粒子の直径はおよそ10nmととても小さく、インフルエンザウイルスの10分の1程度です。粒径は9nmで、界面活性剤の分子長は1.5nmが、それぞれ適切とされています。界面活性剤が短いと凝集しやすく、長いと油の中での金属磁性体の充填割合が下がるため、磁性が十分得られません。

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