タフピッチ銅とは
タフピッチ銅とは、銅の含有量が99.90%以上である銅合金です。
JIS (日本産業規格) ではC1100という規格番号で規定されています。一般的に電気伝導性が高く、熱伝導性も優れています。また、タフピッチ銅は比重が軽く耐食性も高いため、電気配線や機械部品、建築材料など様々な分野で使用されている材料です。さらに加工性も優れており、板、棒、管など、様々な形状に加工できます。多様な用途に対応できる優れた性能を持つ銅合金であり、広く利用されている材料の1つです。
タフピッチ銅の使用用途
タフピッチ銅の主な使用用途は下記の通りです。
1. 電気・電子部品
タフピッチ銅は高い導電性と可塑性を持ち、電気・電子部品の製造に広く使用されています。例えば、コイル、トランス、コネクター、配線、プリント基板などが挙げられます。トランス (英: transformer) とは、電磁誘導の原理を利用して、電圧や電流を変換するための電気部品です。プリント基板 (英: printed circuit board, PCB) とは、電気回路を構成するための基盤となる板状の部品です。一般的には、ガラス繊維強化樹脂やポリイミド樹脂などの基板に、銅箔を薄く張り付け、その上に導電性のパターンを印刷して作られます。
2. 建築材料
タフピッチ銅は、その美しさと耐久性から建築材料としても使用されます。例えばドアノブ、手すり、シンク、浴槽、天井や壁の装飾などが挙げられます。
3. 熱伝導性材料
高い熱伝導性能があることから熱伝導性材料として使用されます。例えば熱交換器、放熱板、冷却器などが挙げられます。
4. その他の用途
自動車部品、船舶部品、加工機械、医療機器などが挙げられます。
タフピッチ銅の性質
タフピッチ銅の主な性質は下記の通りです。
1. 導電性
タフピッチ銅が導電性が高い理由は、銅自体が電気伝導性に優れているためです。銅は電気抵抗率が非常に低い金属の1つであり、金属の中でも高い電気伝導性を持ちます。
タフピッチ銅は、高純度の銅をベースにした合金であるため、銅自体が持つ高い導電性能をより引き出せる材料です。また、微細な結晶粒子を持ち、電子が結晶粒子同士を移動する際に障害となる隙間が少ないため導電性が高くなります。さらに、熱処理によって結晶粒子を均一に形成できるため、導電性が向上します。熱処理によって、微細な結晶粒子同士が近接して存在するため、電子の移動に妨げが生じにくく、導電性が高くなります。
2. 加工性
タフピッチ銅が加工しやすい理由は、微細な結晶粒子が均一に分布して良好な可鍛性と可延性があるためです。また、低い強度と高い塑性を持っているため変形しやすく、形状を保持しやすいことや、高い熱伝導性により加工時に発生する熱が均一に逃げやすく温度上昇が抑えられることなども挙げられます。
可鍛性とは、金属が加工される際に鍛造や圧延などの力によって変形しやすい性質のことです。可延性とは、金属が引っ張られたり伸ばされたりすることによって変形しやすい性質のことです。塑性とは、金属が圧力や力によって変形し、新しい形状を維持できる性質のことを指します。つまり、金属が変形する際に元の形状を保持せず、新たな形状に維持できる能力を表します。
3. 耐食性
タフピッチ銅は高純度の銅をベースにした合金であり、銅自体が持つ耐食性を持っています。銅は一般的に、多くの酸化物や水酸化物に対して安定しており、さらに銅表面に形成される酸化被膜により、腐食を防げる材料です。また、結晶粒子が微細で均一であるため、材料内部での組織構造が安定し耐食性を高められます。特殊な熱処理により結晶粒子を均一に保てるため、熱処理後は耐食性が高くなります。
4. 熱伝導性
タフピッチ銅は結晶粒子が微細で均一であるため、熱伝導性が高い材料です。また、銅自体が熱伝導性に優れているため、タフピッチ銅も熱伝導性が高くなります。銅自体は、熱を効率的に伝導する性質を持っています。理由は、銅原子が密に詰まっているため、原子間の距離が短く、熱エネルギーが伝達されやすいためです。
タフピッチ銅は高純度の銅をベースにした合金であり、銅自体が持つ熱伝導性に加えて、特殊な製造方法により微細な結晶粒子を形成しています。よって材料内部での熱伝導がスムーズに行われるため、熱伝導性能が高くなります。また、結晶粒子の均一性が高いため、熱の伝わりやすさが一様に保たれ、材料全体での熱伝導が高くなるのが特徴です。
5. 耐食性が優れている
タフピッチ銅は高純度の銅をベースにした合金であり、腐食に強い優れた耐食性を持っている材料です。また、特殊な熱処理により均一な結晶粒子構造を持ち、さらに耐食性を高められます。さらに、タフピッチ銅には微生物に対する抗菌性があるため耐食性に優れた材料として使用されます。
6. 抗菌性
タフピッチ銅には、一般的な銅材料と同様に抗菌性があリマス。銅は抗菌性に優れ、多くの種類の細菌やウイルスなどの微生物を殺菌することが知られています。抗菌性は銅の表面に存在するイオンによってもたらされます。
タフピッチ銅も純度が高く、均一な結晶粒子が存在するため、抗菌性能が高くなります。また、タフピッチ銅の表面は、細胞膜や酵素などを損傷できる銅イオンを放出しやすくなっています。そのため医療機器や食品加工装置などの分野で、抗菌性が要求される用途に適しています。
タフピッチ銅のその他情報
タフピッチ銅の代替品
タフピッチ銅の代替品として、銅ニッケル合金や銀めっき銅などがあります。これらの材料も高い導電性や耐食性を持っていますが、タフピッチ銅と比較して、加工性や熱伝導性などの特性が異なるため、用途によってはタフピッチ銅が適している場合があります。