MEMSセンサーとは
MEMSセンサーとは、微細加工技術を用いて作られた微小なセンサーです。
MEMSは (英:Micro Electro Mechanical Systems) の略であり、電気的および機械的な構造を統合したデバイスを指します。電子機器に機械構造を組み合わせて製造することで、従来のセンサーよりも小型化することが可能です。スマートフォンやウェアラブルデバイスなど、サイズや重量を極力軽くしたい製品に組み込みやすい点が特徴です。
また、小型軽量のため、エネルギー効率が高く、低消費電力で駆動します。したがって、バッテリー駆動のデバイスでも長時間使用可能です。
MEMSセンサーの使用用途
MEMSセンサーは、その微細な構造と多様な機能から、私たちの生活に深く浸透し、以下のような用途で使用されます。
1. 電子機器
スマートフォンには多くのMEMSセンサーが内蔵されています。加速度センサーやジャイロスコープを内蔵することで、画面回転やモーション操作を検出します。また、MEMSによるマイクロフォンを内蔵することで、軽量なスマートフォンに通話や音声認識などの高度機能を実現することが可能です。
2. 自動車
自動車分野では、安全性や利便性の向上のためにMEMSセンサーが使用されます。エアバッグシステムでは、加速度センサーが衝突を瞬時に検知し、適切なタイミングでエアバッグを展開します。また、タイヤ空気圧監視システムでは、圧力センサーを使ってタイヤの空気圧をリアルタイムで監視し、異常を警告することが可能です。ジャイロスコープや加速度センサーは運転支援システムに組み込まれる場合もあります。
3. 製造業
産業分野では、MEMSセンサーがプロセス管理や機械安全に使用されます。加速度センサーを活用して機械の振動を監視し、異常を検知することで設備の故障を未然に防ぐことが可能です。また、自律型の産業機械においても、MEMSセンサーを活用して精密な位置決め・ナビゲーションを実現します。
MEMSセンサーの原理
MEMSセンサーは微細加工技術を用いて作られた機械構造が外部の物理量を感知し、それを電気信号に変換する仕組みです。特に、シリコン基板上に感知部分や変換機構及び信号処理回路が一体化している点が特徴です。これにより、小型で高性能なセンサーを実現しています。
まず、感知部分となる各種センサー素子が圧力や加速度などの物理量を感知します。これらを電圧・電流などの電気信号として出力します。これらを内部の電子回路で信号処理します。増幅やフィルタリングを経て、アナログまたはデジタル信号として出力し、外部デバイスで利用することが可能です。
この仕組みにより、MEMSセンサーは高精度でリアルタイムの物理量測定が可能となり、幅広い分野で応用されています。
MEMSセンサーの種類
MEMSセンサーには、その小型軽量かつ高性能な特性から、多くの種類が存在し様々な製品に組み込まれています。以下はその中でも広く利用される代表例です。
1. 加速度センサー
加速度センサーは対象物の加速度を測定するためのセンサーです。内部にはばねで支えられた小さな可動部があり、この加速度に応じて移動します。その移動による力の変化をピエゾ抵抗などにより検知し、加速度のデータとして出力する仕組みです。スマートフォンの画面回転機能や歩数計、車両の衝突検知システムに活用されます。
2. ジャイロスコープ
ジャイロスコープは回転運動や角速度を測定するセンサーです。センサー内の振動構造体が回転すると、コリオリ力が発生し、振動方向に変化が生じます。この変化を静電容量や圧電効果として検知し、回転角速度を計測する仕組みです。ゲーム機のモーション操作やカメラの手ぶれ補正、自動車の車両安定制御システムなどに利用されます。
3. 圧力センサー
圧力センサーは周囲の圧力や力を測定するセンサーです。内部の薄膜が外部圧力に応じて変形し、静電容量や抵抗変化として検知します。気圧計や高度計、自動車のタイヤ空気圧監視システムなどに使用されます。
4. マイクロフォン
MEMSマイクロフォンは音波を検知し、それを電気信号に変換するセンサーです。音波がセンサー内の薄膜に当たると振動が発生し、この振動を静電容量の変化として検知する仕組みです。スマートフォンやイズキャンセリング機能を備えたヘッドセットなどに利用されます。