沈砂槽

監修:日本エンヂニヤ株式会社

沈砂槽とは

沈砂槽とは、河川からの取水や汚水処理において、水の中に含まれる砂などの異物を除去することを目的とした水槽のことです。大規模な下水処理施設や公共施設に設置される下水処理においては、複数の池や水槽を組み合わせた工程が組まれていますが、沈砂池や沈砂槽という工程が組み込まれています。いずれの場合においても、処理工程の比較的早い段階で行われる処理です。

本稿で扱う沈砂槽も同様の役割を担うものであり、それぞれの用途に適したサイズや形状のものが製品化されています。

沈砂槽の使用用途

沈砂槽が用いられるのは、主に以下の3つの場面です。

1 つ目に河川や湖沼から取水する際に、砂や小石などを除去するために用いられます。山間部などの河川から取水したい場合で、かつ取水場所に沈砂池のような施設が設置できない状況は、沈砂槽が用いられるケースの一つです。

2 つ目に下水処理です。私たちのまちに整備されている上下水道では地域ごとに集合した下水処理施設で処理されますが、特に下水から異物を除去する必要がある場合に使用されます。

3 つ目に、工場などで用いられる工業用水で処理が必要な場合に、沈砂槽が設置されます。工業用水に異物が多く含まれることによって他の設備に悪影響を及ぼしたり環境を汚染する恐れがある場合に、沈砂槽を適切に設置することが大切です。

また特殊な事例に特化した製品として、マンホールから地下クロージャーを開けて作業する際に溜まっている水をポンプで汲み上げ、異物を除去して水のみを下水道に流すことができる製品もあります。

沈砂槽の原理

沈砂槽で異物を除去できるのは、液体中において液体よりも比重の大きいものが下に沈むという自然現象によるものです。逆にいうと沈砂槽で除去できるのは、水よりも比重が大きいものに限られます。

比重が水に近く僅かに大きい場合には、水の流れによって異物もなかなか沈まずに水中に漂うことがあります。そこで沈砂槽では水の流速を少なくし、異物を沈みやすくしているのも沈砂槽の特徴の一つです。

水と異物の分離を確実にするために、水槽内に仕切りを設けた製品もあります。水面よりも低い高さの仕切り板を設けることによって、水面から離れた異物を沈砂槽の排水口に流れないようにしたり、V字形状のノッチを設けた仕切り板を設置できる製品もあります。

仕切り板の設置は垂直だけでなく、傾斜板にすることによって、より微細な異物が除去できる製品も販売されています。

沈砂槽の構造

沈砂槽は概ね水を蓄える本体となる水槽に、処理水が入る取水口、異物が除去された処理水が排水される排水口、水槽内に設置される仕切り板やノッチ板で構成されているのが一般的です。

取水口は製品によっては特に設けられておらず、ホースなどで流入させるタイプもあります。取水口がある場合、多くは水槽の高い位置に設置されています。

一方で排水口は水槽の低い位置に設けられています。排水口は低い位置に設定されていることによって、水槽内の水が少なくなっても排水することが可能です。製品によってはゴム栓によって塞ぐことができる製品もあります。

沈砂槽のその他情報

本稿で扱っている沈砂槽は定常的に設置して使用するものではなく、移動して使用できることを特徴とした製品を対象にしています。そこで持ち運びできることを特徴とした製品においては、本体をポリカーボネートなどの樹脂にすることで軽量化を図ったり、トラックなどの荷台に乗せやすいサイズで設計されているのも移動を前提とした沈砂槽の特徴の一つです。沈砂槽では本体となる水槽の容積によって処理能力も変わるため、複数のサイズの製品を用意しているメーカーもあります。

沈砂槽は複雑な構造や機構を用いることなく、比重の大きいものが沈むという物理現象のみを利用することで、異物が除去できる信頼性の高い製品です。

本記事は沈砂槽を製造・販売する日本エンヂニヤ株式会社様に監修を頂きました。

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