監修:キーコム株式会社
誘電率測定装置とは
誘電率測定装置とは、物質の分極のしやすさの指標である誘電率を測定するための装置です。
誘電率は蓄えられる電気の大きさを表す指標となっているため、誘電率の測定は、コンデンサ用の材料や絶縁体の性能を評価するシーンで利用されています。誘電率測定装置には、インピーダンスアナライザや、各種共振器が用いられます。共振器を用いる共振法には、様々な種類の共振器を用いた測定方法の種類があり、測定物に合わせて最適な方法が使用されます。
誘電率測定装置の使用用途
誘電体とは、電気伝導率が低い絶縁体でありながら分極性があり、低い周波数や 中程度の周波数領域では電荷を蓄えることができる物質です。下記のような製品に用いられています。
- 電子機器の絶縁材料
- コンデンサの電極間挿入材料
- 半導体素子のゲート絶縁膜
- 圧電素子
- 強誘電素子センサ
- トランスジューサ
信号の遅延・減衰・反射・クロストーク・放射などの信号伝送の品質は、材料のもつ電気特性によって大きく左右されます。優れた高周波特性を持つ材料を開発する上では、電気材料の特性を正確に把握することが必要です。誘電体の利用の上で、誘電率測定装置は下記のような用途で利用されます。
- コンデンサ用の誘電材料の評価
- 液晶材料に混入した不純物イオンの検出
- 有機半導体の移動度の測定
- 固体電解質の電導度評価
- 回路基板に使用される絶縁材料の評価
尚、誘電率測定装置で測定される誘導体には下記のようなものがあります。
- 高速ディジタル、マイクロ波回路の基板材料
- 通信用誘電体アンテナ、フィルタ用低損失誘電体、高誘電体
- 薄膜材料、多層構造材料、新素材
- 半導体向け絶縁材料
- 医用電子機器
- 化学薬品
- 各種粉体、液体
- ケーブル絶縁体
- 樹脂
- ガラスやセラミックス類
誘電率測定装置の原理
1. 概要
誘導率測定装置には、いくつかの種類があり、大きな分類では下記のように分けられます。
- 容量法 (集中定数法) : 測定試料を電極で挟んでコンデンサを形成し、キャパシタンスとコンダクタンスを測定して誘電率を得る方法 (インピーダンスアナライザ)
- 反射伝送法 (S パラメータ法) : 伝送線路に測定試料を設置し、電磁波をかけることでその反射特性や透過特性から誘電特性を評価する方法
- 共振法: 共振器内に微小な誘電体や磁性体を挿入した際に生じる、共振器内の共振周波数やQ値の変化量を測定して誘電率を測定する方法
上記の方法はそれぞれ、周波数範囲によって使い分けられます。数μHz~数100MHz範囲においては容量法を利用したインピーダンスアナライザが使用されることが多いです。それよりも高周波領域では、反射伝送法や共振法が利用されます。
誘電率測定装置の種類
誘導率測定装置には、測定対象物に合わせて様々な装置があります。下記は具体例の一部です。
1. インピーダンスアナライザ
インピーダンスアナライザは、容量法の誘電率測定に使用されています。測定試料を2枚の電極に挟み、電圧または電流の交流を印加する仕組みです。測定したインピーダンス値から、誘電率や誘電損失を計算することができます。
固体液体を問わず物体の状態に合わせて状態に合わせてサンプルホルダを購入または製作することができるため、比較的測定が容易です。また、他の測定方法に比べて比較的コストが低いです。
2. 空洞共振器
空洞共振器とは、導体壁で囲まれた空間内に、その寸法及び形状で定まるある特定の波長の電磁界のみが成長する共振現象を生じさせることで、誘電率及び誘電損失を測定する装置です。
フィルム、板/シート状のサンプルを短冊状に一定の幅に切断して測定するタイプの装置や、共振器の間のギャップにシート状サンプルを挿入するタイプの装置などがあります。
3. 同軸共振器
同軸共振器とは、サンプルの平坦な面を共振器の上に置くだけで誘電率の測定が可能な共振器です。同軸共振器は、共振器上部に小径の開口部があり、そこからはみ出るわずかな近接場 (エバネッセント波) が測定サンプルに浸潤し、共振器全体の共振周波数、Q値がサンプルの複素誘電率に応じて変化する仕組みです。このQ値の変化量から誘電率を算出します。
携帯端末の筐体部品や、多ピンコネクタのモールド樹脂、各種素材開発品の測定に特に適している種類の共振器です。
本記事は誘電率測定装置を製造・販売するキーコム株式会社様に監修を頂きました。
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