固相抽出ディスクとは
相抽出ディスクとは、液体試料中の成分を分離・濃縮するために使用する円盤状のフィルターです。
化学分析の前処理において、試料から不要な物質を取り除いて抽出する工程は非常に重要です。固相抽出はこの前処理で広く用いられる手法の一つであり、その中でもディスク形状を採用したものが固相抽出ディスクです。ガラス繊維やフッ素樹脂でできた網目状の膜に、特定の成分を吸着する微細な粒子が固定された構造をしています。
一般的な筒状のカートリッジ型と比較して、固相抽出ディスクは断面積が大きく設計されています。一度に多くの試料を通水できるため、処理時間を短縮できる点が特徴です。また、試料水に含まれる浮遊粒子による目詰まりが起きにくいため、環境水などの懸濁物質を含むサンプルの分析には特に適しています。
固相抽出ディスクの使用用途
固相抽出ディスクは以下のように使用します。
1. 環境分析
河川水や工場排水などに含まれる微量な有害物質の測定において、固相抽出ディスクは頻繁に使用されます。環境分析では大量の水を処理する必要がありますが、ディスク型は通水速度が速いため、短時間で効率よく目的成分を濃縮できます。残留農薬や油分など、濃度の低い汚染物質を正確に検出するために欠かせない役割を担います。
2. 食品
飲料水や酒類といった液状食品の成分分析にも利用されます。食品中には糖分やタンパク質など、分析の妨げとなる物質が多く含まれています。固相抽出ディスクを用いることで、これらの不要な物質を除去しつつ分析対象成分だけを取り出せます。食品添加物の濃度測定など、食の安全を守るための分析現場で導入されます。
3. 生体試料
血液や尿などの生体試料から、医薬品成分や代謝物を抽出する際にも活用します。血液などの生体試料は採取できる量が限られている場合が多いですが、少量の試料からでも効率的に成分を回収できる固相抽出ディスクの機能が有用です。病院での臨床検査や法医学分野における薬毒物検査などに役立てられています。