二酸化チオ尿素

二酸化チオ尿素とは

二酸化チオ尿素 (英: Thiourea dioxide) とは、化学式CH4N2O2Sで表される有機硫黄化合物です。

その他の名称として、ホルムアミジンスルフィン酸(FAS) やチオ尿素ジオキシドなどがあります。CAS登録番号は、1758-73-2です。

また、可燃性であり、湿った空気や湿気、水に接触すると発火するおそれがあります。このため、消防法において「適応の可否については検討が必要」とされています。

二酸化チオ尿素の使用用途

二酸化チオ尿素の主な使用用途は、還元剤です。皮革加工、製紙産業、写真産業、繊維加工などの分野で広く使用されています。具体的な利用方法には、古紙の漂白による紙のリサイクルや織物の染料の脱色、羊毛や絹の漂白などがあります。

その他の用途は、ポリマー材料工業などにおける有機合成の際の触媒や、写真用エマルジョンの増感剤の添加物、医薬品の製造などです。さらに、貴金属の回収および分離などの用途もあります。熱安定性が良く、還元性に優れ、操作及び輸送が容易で保管が容易であることから、広く好まれて用いられている物質です。

二酸化チオ尿素の性質

二酸化チオ尿素の基本情報

図1. 二酸化チオ尿素の基本情報

二酸化チオ尿素は、分子量108.12、融点144℃ (分解) であり、常温での外観は白色または淡黄色の無臭の結晶性粉末です。

無臭ですが、刺激性が強く、かぶれやすい性質があります。水にやや溶けやすく、エタノールおよびアセトンにほとんど溶けません。また、ジエチルエーテル、ベンゼンにも不溶です。水への溶解度は 27g/L (20℃)です。

二酸化チオ尿素の種類

二酸化チオ尿素は、一般的に研究開発用試薬製品や産業用化学薬品として販売されています。

1. 研究開発用試薬製品

研究開発用試薬製品としては、100gや500gなどの容量の種類があります。実験室で取り扱いやすい容量が中心ですが、やや大きい容量での提供です。室温にて保管されることもありますが、冷蔵保管とされることも多い物質です。

2. 産業用化学薬品

産業用化学薬品としては、25kgバッグ、50kgバッグ、50kg紙ドラム、180kg鉄ドラム、500kgコンテナバッグ、1,000kgコンテナバッグなどの容量の種類があります。

工業用還元剤として幅広い用途で提供されている他、古紙処理薬品として位置づけられている製品もあります。

二酸化チオ尿素のその他情報

1. 二酸化チオ尿素の合成

二酸化チオ尿素の合成反応

図2. 二酸化チオ尿素の合成反応

二酸化チオ尿素は、主に過酸化水素を用いたチオ尿素の酸化反応にて合成されます。

2. 二酸化チオ尿素の有害性

二酸化チオ尿素の有害性

図3. 二酸化チオ尿素の有害性

二酸化チオ尿素は、下記のような有害性が指摘されています。

  • 自己発熱: 火災のおそれ
  • 飲み込むと有害
  • 吸入すると生命に危険
  • 皮膚刺激
  • 強い眼刺激
  • 生殖能または胎児への悪影響のおそれの疑い
  • 呼吸器の障害
  • 腎臓の障害のおそれ
  • 眠気やめまいのおそれ
  • 長期にわたるまたは反復ばく露による肝臓、腎臓の障害のおそれ

また、GHS分類では、下記のように指定されている物質です。

  • 自己発熱性化学品: 区分1
  • 急性毒性 (経口) : 区分4
  • 急性毒性 (吸入: 粉じん) : 区分2
  • 皮膚腐食性・刺激性: 区分2
  • 眼に対する重篤な損傷・眼刺激性: 区分2
  • 生殖毒性: 区分2
  •   特定標的臓器・全身毒性 (単回ばく露) : 区分1 (呼吸器) 、区分2 (腎臓)、区分3 (麻酔作用)
  •   特定標的臓器・全身毒性 (反復ばく露) : 区分2 (肝臓、腎臓)

3. 二酸化チオ尿素の法規制情報と取扱い上の注意

二酸化チオ尿素は、消防法において「形状、条件によって発火性を示すことがあるので、適応の可否については検討が必要」とされている物質です。

また、前述の有害性があることから、取り扱いの際は、適切な局所排気、全体換気を整備するとともに、保護衣・保護メガネなどの適切な個人用保護具を用いることが必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1758-73-2.html

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