アセトイン

アセトインとは

アセトインの分子内におけるα-ヒドロキシケトン構造

図1. アセトインの分子内におけるα-ヒドロキシケトン構造

アセトイン (英: Acetoin) とは、分子式C4H8O2で表される化学物質です。

アセトインという名称は、慣用名であり、IUPAC命名法による名称は3-ヒドロキシ-2-ブタノンです。その他の別名には、アセチルメチルカルビノールなどがあります。CAS登録番号は513-86-0です。

分子内に隣り合ったカルボニル基とヒドロキシ基を持つ化合物であり、一般式RC(=O)CH(OH)R’ で表されるα-ヒドロキシケトン (アシロイン) の1種です。

アセトインの使用用途

アセトインの主な使用用途は、香料です。食品添加物として認められており、広く用いられています。アセトインの香りは、バターやヨーグルトに似た独特のにおいです。この性質を利用して、主にお菓子、マーガリン、コーヒー、キャラメル、タバコ、乳製品に添加されています。

また、アセトインはバターの製造の際に生成する物質です。バター製造用のクリームを熟成させる際に、バター脂にある種のバクテリアが作用することによりアセトインが発生します。

天然ではその他に、主に発酵食品に香りの成分として含まれていますが、野菜や果物にも少量含まれています。なお、バターに風味を加える物質であるジアセチルは、アセトインを原料として製造されています。

アセトインの性質

アセトインの基本情報

図2. アセトインの基本情報

アセトインは、分子量88.11、融点15 ℃、沸点148 ℃であり、常温での外観は、無色から微黄色の液体です。

臭いは、 バターのような臭いと形容されます。密度は1.02g/mLであり、水、エタノール、プロピレングリコール、エーテル、ジクロロメタンなどに容易に溶解します。炭化水素溶媒には微溶です。

アセトインの種類

アセトインは、主に研究開発用試薬製品や、香料として販売されています。

1. 研究開発用試薬製品

研究開発用試薬製品としては、5g、25g、50g、100g、250g、500g、1kgなど、様々な容量の種類があります。実験室で取り扱いやすい容量を中心に販売されている物質です。通常、冷凍もしくは冷蔵 (2-8℃) で販売されています。

2. 香料

香料としては、産業用・業務用に提供されている物質です。製品詳細については、メーカーへの個別の問い合わせが必要です。

アセトインのその他情報

1. アセトインの合成

アセトインの合成方法には、チアゾリウム塩触媒を用いたアセトアルデヒドのベンゾイン縮合や、酢酸エステルのアシロイン縮合などの方法が挙げられます。

その他に、2,3-ブタンジオールの微生物酸化や、鉛と酸を用いたジアセチル (2,3-ブタンジオン)の部分還元などによっても合成することが可能です。糖を用いる方法では、ソルボースを発酵させ、その発酵生成物としてアセトインを得る方法があります。

2. アセトインの化学反応

アセトインの二量体化反応

図3. アセトインの二量体化反応

アセトインを室温で放置すると、徐々に二分子間でカルボニル基にヒドロキシ基が付加して、ヘミアセタール化した二量体が得られます (2,5-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオール)。

この二量体生成物は融点 90°Cの結晶性物質ですが、融点以上に加熱することで単量体へ変化させることが可能です。尚、溶液の状態では単量体のまま保存することができます。

3. アセトインの危険性と法規制情報

アセトインは、 引火性液体および蒸気であり、GHS区分において引火性液体: 区分3に指定されています。熱、火花、裸火、高温のもののような着火源から遠ざけ、容器を密閉して保管することが必要です。

法令においては、労働安全衛生法で危険物・引火性の物に指定されている他、消防法では第4類引火性液体、第二石油類水溶性液体に指定されています。法令を遵守して正しく取り扱うことが必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/513-86-0.html

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