重クロム酸カリウム

重クロム酸カリウムとは

重クロム酸カリウムとは、化学式がK2Cr2O7で示される無機化合物です。

天然に重クロム酸カリウムは、チリのアタカマ砂漠の硝酸塩堆積物と南アフリカのブッシュフェルト火成岩複合体にある、希少鉱物のロペザイトとして存在します。クロムの酸化数が+6の六価クロムの一つで、環境への負荷の大きい物質です。

重クロム酸カリウムは、原料にクロム鉱を用いて製造します。まずクロム鉱を焼いて砕き、その後、酸化カルシウムと炭酸カリウムを加えて強く加熱し、さらに空気酸化させます。そして硫酸を加えて、結晶として重クロム酸カリウムを生成可能です。

重クロム酸カリウムの使用用途

重クロム酸カリウムの主な使用用途として、写真印刷、マッチの着火剤、爆薬の原料などが挙げられます。

化学の分野では、二クロム酸塩やクロム酸塩を製造する際の原料です。強い酸化剤であり、有機合成の際の酸化剤として使用され、分析試薬としても用いられます。

重クロム酸カリウムはさまざまな分野で重要な物質ですが、有毒であり取り扱いには注意が必要です。重クロム酸塩は毒劇法で劇物に指定されています。以前は硫酸と混合してクロム酸混液として、強力な酸化性により実験機器を洗浄していました。しかし、環境負荷、毒性、廃液処理の煩雑さなどの問題が指摘され、現在では特別な場合を除いて使用されていません。

重クロム酸カリウムの性質

重クロム酸カリウムは橙赤色の柱状結晶です。融点は398°Cで、500°Cで酸素が生じて分解します。エタノールに溶けにくいですが、水には可溶です。

重クロム酸イオンを含む橙赤色の溶液にアルカリを加えると、クロム酸イオンが生成して黄色の溶液になります。冷硫酸で処理すると、無水クロム酸の赤い結晶が得られます。無水クロム酸は三酸化クロムとも呼ばれ、化学式はCrO3です。重クロム酸カリウムを濃硫酸とともに加熱すると、酸素が発生します。

重クロム酸カリウムの構造

重クロム酸カリウムは二クロム酸カリウムとも呼ばれます。結晶構造は三角錐で、配位構造は三斜晶系です。分子量は294.19で、密度は2.676g/cm3です。水に溶けるとイオン化します。

重クロム酸カリウムは通常、塩化カリウムと重クロム酸ナトリウムの反応によって得られます。クロム酸鉱を水酸化カリウムで焙焼し、クロム酸カリウムから合成可能です。

重クロム酸カリウムのその他情報

1. 重クロム酸カリウムの反応

有機化学で重クロム酸カリウムは、過マンガン酸カリウムよりも穏やかな酸化剤です。第一級アルコールをアルデヒドに変換し、条件によってはカルボン酸に変換します。それに対して過マンガン酸カリウムは、カルボン酸のみを与えます。 重クロム酸カリウムによって、二級アルコールをケトンに変換可能です。例えば、メントールを酸性二クロム酸塩で酸化すると、メントンを合成可能です。第三級アルコールは酸化されません。

水溶液中の色の変化は、ケトンとアルデヒドを区別するために使用可能です。アルデヒドは重クロム酸塩の酸化数を+6から+3に還元して、アルデヒドが対応するカルボン酸に酸化されます。この反応で水溶液がオレンジ色から緑色に変わります。その一方でケトンは酸化されないため、変化は見られず、溶液はオレンジ色のままです。

2. 重クロム酸カリウムの危険性

重クロム酸カリウムはクロム皮膚炎の原因の一つです。慢性で治療が困難な手や前腕の皮膚炎に繋がる感作を誘発する可能性が非常に高いです。ウサギとげっ歯類による実験では、低濃度の14mg/kgでも、50%の致死率が示されています。水生生物は影響を受けやすいため、地域の環境規制に従った廃棄が必要です。

他の六価クロム化合物と同様に、重クロム酸カリウムにも発がん性があります。腐食性もあり、暴露すると重度の眼の損傷や失明を引き起こし、生殖能力の障害が起きる可能性もあります。

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