AGV制御とは
AGV制御とは、工場などで稼働されているAGV、すなわち無人搬送車の安全かつ円滑な運行を管理するために用いられる、システムや装置などの製品です。
AGV(英: Automated Guided Vehicle ※)は、予め設定されたガイド (磁気テープ、ビーコン、バーコードなどにより、固定された経路) に従い、自動的に走行を行う車両です。ソフトウェアによって制御され、施設内での資材の運搬などに用いられます。経路上の障害物を検出して自動的に停止することは可能ですが、障害物を避けて自律走行することなどはできません。稼働台数が増えるとスムーズな運用を行うための課題が発生します。このような場合に、全体の運用を監視・管理・制御するため、AGV制御が利用されます。
AGV制御の利用用途
AGVは、工場や大型倉庫、病院における医療器材や、食事の配膳の搬送に用いられます。台車・フォークリフトやベルトコンベアに代わる資材搬送手段として利用されている技術です。予め設定した経路に沿って自動で走行するため、省力化や効率化の上でメリットがあります。
しかし、自動車工場や物流における大規模倉庫など、大規模な導入先では、稼働面積が広くなるとともに、稼働台数も増え、下記のような課題が発生します。
- AGVの交差点、合流点が必要になり、運行管理が難しい
- 稼働面積が広いため、遠隔地の監視が難しい
- 稼働台数が多いため、全てのAGVの稼働状況を把握することが難しい
- 軌道上の偏りや渋滞でスループットが低下する
- シャッター、エレベーターなどの設備と連動が難しい
- AGVが緊急停止した場所に所在地がすぐに分からない
- 稼働状況の記録が難しい
これらの課題を解決し、円滑で安全な運用を行うための一連のシステムや装置などがAGV制御です。
AGV制御の原理
1. 制御システム型
稼働域内全体を制御するAGV制御システムは、無線環境と、無線通信を中心としたシステムを整備し、その中で無線子機を搭載したAGVを制御します。主な機能は下記の通りです。
- 現在位置や走行速度・時間、バッテリーの蓄電量、センサーの異常検知などのリアルタイム監視
- 停止・発進・稼働終了などの遠隔操作
- 最短経路の自動生成と効率的な配車
また、蓄積された運行データを整理して、見える化表示や、解析ツールなどの別のアプリケーションと連携させることにより、業務改善に役立つというメリットもあります。
2. 個別装置型
全体を統括するシステムとは異なり、個々のAGVに取り付けることで制御を行うタイプのAGV制御もあります。
例えば、自動牽引装置では、台車など物流アイテムとAGVを接続することで、ワンタッチでの接続や自動切り離しなどが可能になります。また、レシーバーをAGVへ搭載し、リモコンで操作することや交差点制御を簡単に行うことができる装置もあります。
AGV制御の選び方
AGV制御には、上記の通り全体を制御するシステムや、個別装置をAGVへ搭載するなどの方法があります。システム型の方が全体の複雑な統括が可能ですが、地上設備や無線導入AGV自体の改造など、システム構築に準備が必要です。また、コストも高くなる傾向にあります。一方、個別装置を搭載する方法は、より簡素な機能ではありますが、コストも安価であり、導入も容易です。簡単な交差点制御や分岐合流コースの構築では個別装置型も有効に利用することができます。
システム構築型も、2.4MHz帯の無線LANではなく、920MHz帯のマルチホップ通信を利用することでコストダウンの工夫を行っている製品もあります。920MHz帯は2.4MHz帯よりも回り込み特性が良く、電波干渉が低く、消費電力も低いとされます。また、マルチホップ通信とは、バケツリレー式にデータを転送する無線方式です。1台の無線ユニットでは届かないような広い範囲でも、中継器や他の無線ユニットを経由させて通信を行うことができます。
これら各製品の特性を踏まえ、目的に合った適切な製品を選択することが重要です。
※Automatic Guided Vehicleと表記することもあります。国際標準やISOではAGVをAutomated Guided Vehicleとしていることからこの記事ではAutomated Guided Vehicleとしました。