メチルエチルエーテル

メチルエチルエーテルとは

メチルエチルエーテルとは、常温で気体のエーテル化合物です。

IUPAC名では「エチルメチルエーテル」と呼ばれます。沸点が10.8℃と低いため、常温ではガスボンベに封入された状態で運搬・貯蔵されます。引火性が高く、労働安全衛生法施行令別表第1では「可燃性のガス」、船舶安全法では「液化ガス」に指定されている物質です。

空気中の含量が可燃限界 (下限2% / 上限10.1%) の間の範囲にあると、電気火花や発熱体によって容易に引火します。蒸気が滞留すると可燃範囲に入る恐れがあるため、ドラフト内などの換気の良い場所で扱うことが重要です。

メチルエチルエーテルの使用用途

1. 現在の主な用途

メチルエチルエーテルは、医薬品原薬や化学素材の合成原料、中間体などに使用されています。常温で気体になる性質を利用して、エアロゾル噴射式のスプレーに用いられることもあります。

メチルエチルエーテルを冷却して液体とすることで、固液抽出の溶媒に使うことも可能です。常温に戻すと揮発するため、素早く固形分が得られる利点があります。ただし、ジエチルエーテルの方が安価であり、常温で液体のため扱いやすいことから、メチルエチルエーテルよりも一般的に用いられます。

2. 将来の用途拡大

将来的に検討が進む可能性のある用途は、液化石油ガス (英: LNG) の代替品です。常温で気体となるエーテルは、可燃性であり冷却すれば液体として運搬・貯蔵できるため、 LNG の代わりに民生ガスとして用いる研究が行われています。

ジメチルエーテルが有力とされていますが、類似した性質を持つメチルエチルエーテルも LNG代替品の候補となる可能性もあります。

メチルエチルエーテルの性質

1. 基本的な構造と特性

メチルエチルエーテルは、エチル基とメチル基がエーテル結合したエーテルです。分子式は C3H8O で表され、プロパノールの構造異性体にあたります。

メチルエチルエーテルの基本的な特性 (分子量、比重、溶解性) は以下の通りです。

2. 工業的な合成方法

対称エーテルは、アルコールの脱水縮合反応で合成できます。ジエチルエーテルの場合、エタノールに濃硫酸を加えて加熱することで得られます。

一方、非対称エーテルであるメチルエチルエーテルは、脱水縮合では選択的に合成できません。エタノールとメタノールの混合物に濃硫酸を加えて加熱しても、ジメチルエーテルやジエチルエーテルも発生するためです。

そこで、メチルエチルエーテルの合成には、ウィリアムソンエーテル合成法という手法が用いられます。ウィリアムソンエーテル合成法とは、金属アルコキシドとハロアルカンのSN2反応を利用して非対称エーテルを得る手法です。

メチルエチルエーテルの工業的生産では、金属エトキシドと臭化メチルを原料として行われます。なお、ウィリアムソンエーテル合成法で合成できるのは、メチルエチルエーテルのようにRとR’が第一級または第二級アルキル基の場合に限られます。

メチルエチルエーテルのその他情報

1. 対称エーテルと非対称エーテル

メチルエチルエーテルは非対称エーテルです。エーテルは一般に「R-O-R’」 (R、R’はアルキル基やアリル基など) の構造で表されますが、RとR’の構造が等しいものを「対称エーテル」、RとR’の構造が異なるものを「非対称エーテル」と呼びます。

対称エーテルの例としては、ジメチルエーテル (RとR’がいずれもCH3) やジエチルエーテル (RとR’がいずれもC2H5) が挙げられます。非対称エーテルの例としては、メチルエチルエーテル (RがC2H、R’がCH) やアニソール (RがC6H、R’がCH3) が挙げられます。

2. メチルエチルエーテルの課題

いずれの用途で課題となるのは、メチルエチルエーテルが高価であることです。メチルエチルエーテルはウィリアムソンエーテル合成法で生産されるため、アルコールの脱水縮合で得られるジエチルエーテルやジメチルエーテルよりも、原価が高く製造工程が複雑です。

参考文献
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/M0110#docomentsSectionPDP
https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB1739082.htm
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001897.000071640.html

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