ヘプタン酸

ヘプタン酸とは

ヘプタン酸とは、エナント酸とも呼ばれ、直鎖のカルボン酸です。

化学式はCH3(CH2)5COOHで表され、炭素数7の炭素鎖の末端にカルボキシル基を持っています。腐敗物のような悪臭を持つ無色で油状の液体です。自然界では、ブナ樹の木酢やカルムス油に含まれています。

水には溶けにくい性質を持っていますが、エタノールやエーテルなどの有機溶剤には可溶です。可燃性があり、消防法においては、第4類危険物第3石油類に指定されています。

ヘプタン酸の使用用途

1. 香料

香料として使われるヘプタン酸は、主にカルボン酸エステルの形で使用されています。ヘプタン酸アリル、ヘプタン酸メチル、ヘプタン酸プロピル、ヘプタン酸オクチルなどが知られています。

ヘプタン酸エチルが最も多く使用されており、主に食品香料として重要な原料です。リンゴ・アンズ・パイナップルなどの果物系、バター・チーズ・コーヒー・ナッツ・洋酒のフレーバーなどに使用されています。

調合香料として使用されることは少ないですが、香水にフルーツ感やシトラス感を与えるために使用されることがあります。

2. その他

エステル化によるアルキッド樹脂、金属セッケン、そのアミドはゴム添加剤、コンクリート防食助剤、潤滑油原料などに利用されることがあります。

ヘプタン酸の性質

ヘプタン酸は、分子量130.18、CAS番号111-14-8で表される特異臭のある澄明な液体です。融点および凝固点-9℃、沸点または初留点及び沸騰範囲223℃、引火点112℃で、可燃性があります。密度及び、または相対密度は0.916-0.921g/mL (20℃) です。

通常の状態において安定ですが、高温、直射日光、 熱、 炎、 火花、静電気、スパークを避け、強酸化剤との接触を避けます。危険有害な分解生成物として一酸化炭素 (CO) 、二酸化炭素 (CO2) を発生させる可能性があります。

ヘプタン酸のその他情報

1. 安全性

GHSにおいて、皮膚腐食性、刺激性、眼に対する重篤な損傷性、眼刺激性、特定標的臓器毒性 (単回ばく露) 、水生環境有害性 (急性) に分類されています。

眠気やめまいを引き起こす可能性があり、麻酔作用があるため、粉じん、煙、ガス、ミスト、蒸気、スプレーを吸入し ないよう注意が必要です。

2. 応急処置

万が一吸引した場合は、新鮮な空気のある場所に移動します。皮膚に付着した場合は、直ちに石鹸と大量の水で洗浄し、いずれも症状が続く場合は、医師への連絡、診断が必要です。

眼に入った場合は、数分間継続して洗浄し、コンタクトを装着していて、容易に取り外せる場合は取り外します。洗浄後、直ちに医師の手当てを受ける必要があります。

飲み込んだ場合は、直ちに口をすすぎ、意識が無い場合は、口になにも与えません。直ちに医師もしくは毒物管理センタ ーに連絡します。その際、薬品のSDS等を持参します。

3. 取扱い方法

屋内作業場で使用する場合は、発生源の密閉化、もしくは局所排気装置を設置します。取扱い場所の近くに安全シャワー、 手洗い、洗眼設備を設け、設置位置を明瞭に表示します。

作業者は、保護マスク、不浸透性保護手袋、側板付き保護眼鏡 (必要に応じてゴーグル型または全面保護眼鏡) 、長袖作業衣の着用が必要です。

使用時は火気厳禁とし、高温物、スパーク を避け、強酸化剤との接触を避けます。使用後は、顔、手など曝露した可能性のある皮膚を十分に洗浄します。

4. 保管

直射日光を避け、 換気のよい涼しい場所に密閉し、施錠してて保管します。ガラス製の容器を使用し、強酸化剤と接触しない場所で保管が必要です。

内容物および容器は、地域、国、現地の適切な法律、規則に則り処理を行います。一般的には、承認された廃棄物処理場に廃棄します。

5. 食品添加物としての取扱い

ヘプタン酸は、食品の着香の目的で使用される添加物で、食品衛生法第10条の規定において、人の健康を損なうおそれのない添加物として定められています。

劇物に指定されていますが、急性経口毒性、急性経皮毒性及び急性吸入毒性については、製品中の含有濃度に関わらず、有害性は確認されていないため、安全性に問題ありません。

食品添加物の規格基準において、着香の目的以外に使用してはならない等の使用基準が規定されていることから、食品における含有量は極微量であり、摂取しても安全です。

参考文献
https://www.mhlw.go.jp/content/000519575.pdf
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0108-0018JGHEJP.pdf

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