ネオペンタン

ネオペンタンとは

ネオペンタンとは、2本の側鎖を持つ炭素数5の分岐鎖を有したアルカンです。

ネオペンタンは無色の気体ですが、寒い日などには液体になります。ネオペンタンの構造異性体には、n-ペンタンやイソペンタンがあります。

しかし、n-ペンタンやイソペンタンなどの構造異性体に対して、ネオペンタンは融点が高くて沸点が低いため、状態が安定しない化合物です。ネオペンタンは労働安全衛生法では、施行令別表第1第4号 (危険物・引火性の物) に該当します。

ネオペンタンの使用用途

ネオペンタンの主な使用用途は発泡剤です。その他、エレクトロニクス洗浄剤や化学溶剤として用いられています。発泡剤とは、ゴムやプラスチックのような高分子 (ポリマー) に他の配合剤を加え、加熱分解によって発生したガスなどを包含させることで、細胞構造を形成するための薬剤のことです。

発泡スチロールだけでなく、ウレタンなどの製造にも役立っているため、日々の生活用品に取り入れられています。なお、ネオペンタンは、原油や石油系炭化水素の分解油中から、分留することで得られます。

ネオペンタンの性質

ネオペンタンはエタノールやエーテルには可溶ですが、水には不溶です。常圧におけるネオペンタンの沸点は、9.5°Cです。ネオペンタンは常温常圧では、引火性が高い気体として存在しています。それに対して、寒い日や高圧下では、ネオペンタンは揮発性の液体です。

ネオペンタンの構造

ネオペンタンの構造は、メタンの4つの水素原子がすべてメチル基に置換した形を取っています。ネオペンタンの化学式はC5H12、モル質量は72.15で、示性式は (CH3)4Cです。

ネオペンタンのIUPAC系統名は、2,2-ジメチルプロパン (英: 2,2-dimethylpropane) ですが、IUPAC許容慣用名としてネオペンタンが用いられています。

ネオペンタンのその他情報

1. ネオペンタンの沸点が低い理由

他の構造異性体と比較すると、ネオペンタンの沸点は非常に低いです。常圧で、イソペンタンの沸点は27.7°C、n-ペンタンの沸点は36.0°Cであり、ネオペンタンの沸点は9.5°Cなので、とても低いと言えます。ネオペンタンは室温の大気圧下では気体ですが、構造異性体のイソペンタンやn-ペンタンは液体です。

ネオペンタンの沸点が低い理由は、ネオペンタンの分子間力の作用が弱いためです。すなわち、分岐鎖が増えると分子の形状が球形に近く、直鎖の場合より分子の表面積が減少したことが理由として挙げられます。

2. ネオペンタンの融点が高い理由

ネオペンタンの融点は、常圧で−16.6°Cです。構造異性体のイソペンタンの融点は−159.9°Cで、n-ペンタンの融点は−129.8°Cです。したがってネオペンタンの融点は、イソペンタンの融点より約140°Cも高く、n-ペンタンの融点より約110°Cも高いことになります。

イソペンタンの融点が異常に高い原因は、固体の状態の場合に、強力な分子間力が作用しているためだと説明されてきました。つまり、ネオペンタン分子は正四面体型なので、固相では密接しているために、分子間力が強力に作用すると考えられます。しかし、他の2つの構造異性体よりも、ネオペンタンの密度が低いため、理由として疑わしいと言われてきました。

さらに、ネオペンタンの高い分子の対称性によって生じるエントロピー効果によって、ネオペンタンの融点が高くなっていることが示唆されています。構造異性体であるn-ペンタンやイソペンタンの融解エントロピーよりも、ネオペンタンの固体の融解エントロピーが低いことからです。実際にネオペンタンの融解エントロピーは、構造異性体であるn-ペンタンやイソペンタンより、約4倍も低いです。

3. ネオペンチル基

ネオペンタンから1つ水素が脱離した構造は、ネオペンチル基 (英: Neopentyl substituent) と呼ばれています。ネオペンチル基は、しばしばNpと表記され、Me3C-CH2と略記される場合もあります。

具体例としてネオペンチルアルコールは 、Me3CCH2OHもしくはNpOHと表すことも可能です。

参考文献
https://www.takachiho.biz/pdf/C2H6O.pdf

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です