ニトロソアミン

ニトロソアミンとは

ニトロソアミンの一般構造と代表的な化合物

図1. ニトロソアミンの一般構造と代表的な化合物

ニトロソアミン (Nitrosamine) とは、アミンの誘導体のうち、アミン窒素上の水素がニトロソ基 (-N=O) に置き換わった構造をもつ化合物の総称です。

ニトロソアミンは、大気、水、食品、化粧品、タバコなどに微量含まれていることが確認されていますが、中には発がん性をもつ物質もあることが知られています。代表的な発がん物質は、N-ニトロソジメチルアミン (NDMA) や、N-ニトロソジエチルアミン (NDEA) です。

近年では、サルタン系・ラニチジン系医薬品の原薬において不純物としてNDMAやNDEAが検出され、製品回収へ至ったことがあります。そのため、ニトロソアミンの混入リスクの評価・自主点検を行うよう、厚生労働省から医薬品メーカーに通達されました。

ニトロソアミンの使用用途

ニトロソアミン類は、工業的には可塑剤・添加剤などに広く用いられています。例えば、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン (N,N’-Dinitrosopentamethylenetetramine) は、ゴムなどの有機発泡剤として使用されています。

ニトロソアミン類は、その多くについて発がん性があることが知られている化合物群です。例えば、N-ニトロソノルニコチン (NNN) や、4-(メチルニトロソアミノ)-1-(3-ピリジル)-1-ブタノン (NNK) は、タバコに含まれる有害物質であることが知られています。

有害性がある一方で医薬品の製造過程においては不純物として生成する可能性があるため、近年では混入リスクの評価や混入リスク軽減策を講じるようになっています。これらの試験・分析を目的に、対照実験としてニトロソアミン類の標準品・混合標準液が使用されており、外部試験委託も活発に行われています。

また、加工品を中心に食品にも微量の混入事案があることから、医薬品以外でも混入リスクを評価されるようになってきました。

ニトロソアミンの性質

肉に含まれるヘム鉄が発がん性のあるニトロソアミン類の生成を促したり、肉を燻製にすることによってもニトロソアミンが生成したりするケースがあります。さらに、加工肉に添加される亜硝酸ナトリウムや硝酸ナトリウムはニトロソアミン生成の原因です。

食品については調理により、ニトロソアミンの量が変化することがわかっています。100℃以下での調理ではほぼ増えることはないとされますが、高温調理では増加傾向です。

ニトロソアミンの種類

ニトロソアミンの化合物群

 図2. ニトロソアミンの合成

近年医薬品などへの混入が指摘されているニトロソアミン類のうち、最も構造が単純なものが、N-ニトロソジメチルアミン (NDMA) とN-ニトロソジエチルアミン (NDEA) です。それ以外にもN-ニトロソ-N-メチル-4-アミノ酪酸 (NMBA) 、N-ニトロソメチルフェニルアミン (NMPA) 、N-ニトロソイソプロピルエチルアミン (NIPEA) は実際に原薬や製剤から検出されており、その他にN-ニトロソジイソプロピルアミン (NDIPA) とN-ニトロソジブチルアミン (NDBA) は、理論上混入の危険性が指摘されています。

これらの化合物については許容摂取量 (ng/day) が厚生労働省によって定められました。現在では、原薬中のニトロソアミン類が管理基準以下であることを確認するよう、各メーカーに自主点検が要請されています。

ニトロソアミンのその他情報

ニトロソアミンと医薬品製造

ニトロソアミンの合成

図3. ニトロソアミンの合成

ニトロソアミン類は、2級アミンと亜硝酸の反応によって生成することが知られています。近年、ニトロソアミン類は医薬品から不純物として検出されました。サルタン系医薬品においては、溶媒であるジメチルホルムアミド (DMF) と、亜硝酸とが、反応することが原因であると考えられています。

この際に使用される亜硝酸はテトラゾール環形成で使用するアジドをクエンチする目的で添加されます。また、ラニチジン塩酸塩の製剤及び原薬からもNDMAが検出されたことがあります。ラニチジンは、NDMAの元となるN-ジメチル構造と、ニトロ基を有している化合物です。

そのため、ラニチジンの場合のNDMAの生成原因は、温度とラニチジン自身の構造にあると考えられています。実際に、ラニチジンは高温にさらされるとNDMAが大幅に増加するという報告があります。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/62-75-9.html

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