しゅう酸カルシウム

しゅう酸カルシウムとは

しゅう酸カルシウムとは、カルシウムのしゅう酸塩です。

植物に含まれているほか、しゅう酸を製造する際の中間体としても発生します。常温では無色の針状結晶であり、水にはほとんど溶けません。

無水物だけでなく、一水和物、二水和物 (ウェッデライト)なども存在します。植物ではルバーブの葉、ヤマイモ、サトイモ、テンナンショウ、未処理のコンニャク、未成熟のパイナップルなどに含まれています。

含量が高い場合は、皮膚刺激性や強いえぐ味を示し、人体に有害です。

しゅう酸カルシウムの使用用途

しゅう酸カルシウム単体の使用用途は、カルシウムイオンやしゅう酸イオンの定性・定量分析の標準溶液、陶器の釉薬 (うわぐすり) などです。しゅう酸カルシウムは、しゅう酸を製造する際の中間体として発生します。

しゅう酸カルシウムに硫酸を加えると、硫酸カルシウムが析出して、しゅう酸イオンが遊離します。硫酸カルシウムを濾過で除去し、濾液を蒸発させるとしゅう酸の結晶が析出します。

しゅう酸カルシウムの特徴

しゅう酸カルシウムはカルシウムのしゅう酸塩であり、化学式はCaC2O4です。水が配位結合して、一水和物や二水和物を形成することがあります。

実験用試薬などでは、一水和物の状態で販売されている場合もあるため、実験に用いる際はラベル表示の確認が必要です。なお、しゅう酸カルシウムの水和物を200℃に加熱すると、結晶種を失って無水物となります。

しゅう酸カルシウムの基本的な特性 (分子量、比重、溶解性) は以下の通りです。

  • 分子量:146.11
  • 密度:2.2g/cm3
  • 溶解性:水、エタノールにほとんど溶けない。希塩酸、希硫酸に溶ける。

しゅう酸カルシウムのその他情報

1. 人間への毒性

しゅう酸カルシウムは、皮膚や粘膜に対し強い刺激性・腐食性を持ちます。手や目に付着しないよう、ニトリル手袋や保護めがね等の保護具を着用します。

しゅう酸カルシウムが皮膚に付着した場合は、流水ですすぎながら石鹸でよく洗います。石鹸を用いるのは、 pH を上げることでしゅう酸カルシウムの溶解度が上がり、洗い流しやすくなるためです。

眼に入った場合は、しゅう酸カルシウムの結晶が目から流れ出やすいように、顔を横にした状態で流水で洗浄します。このとき、まぶたを指で広げて、眼球をゆっくり動かしながら、まぶたの裏までよく洗うようにします。目に刺激感が残る場合は医師の診察が必要です。

2. 劇物としての規制

しゅう酸カルシウムは皮膚刺激性を持つことから、毒物及び劇物取締法における「劇物」 (法第2条別表第2) に指定されています。しゅう酸カルシウムを入れた容器には「医薬用外劇物」と明記されたラベルを貼付し、盗難や漏洩を予防するために鍵のかかる場所での保管が必要です。

3. 食品中のしゅう酸カルシウム

しゅう酸カルシウムは植物の二次代謝産物として蓄積されるため、食品中にも含まれている成分です。特にホウレンソウ、長芋、紅茶などには、しゅう酸カルシウムが多く含まれています。

長芋のとろろを食べると唇が痒くなることがありますが、これは長芋に含まれるしゅう酸カルシウムが唇の粘膜を刺激するためです。未処理のコンニャク芋は、さらにしゅう酸カルシウム含量が高いため、強アルカリで処理してから粉砕・混合・凝固を経て食品の「こんにゃく」に加工します。

コンニャクの生芋を素手で触れると、しゅう酸カルシウムの刺激によって炎症を起こし、病院で治療が必要になる場合があります。山野に生えている野草でも、テンナンショウの仲間のように、しゅう酸カルシウムを多量に含む植物が自生しています。

キャンプや登山などの際に不用意に素手で触れないよう、図鑑で形態を知っておくことがリスク管理上大切です。

4. 尿路結石

食品から摂取したしゅう酸カルシウムは、水にほとんど溶けないため尿中に排泄されにくく、徐々に体内に蓄積されます。体内のしゅう酸カルシウムが、腎臓や尿路で結晶として析出したものが結石です。

5. 加熱による分解

しゅう酸カルシウム自体は不燃性ですが、加熱したり強酸化剤と触れたりすると分解が起こります。分解生成物として有毒な一酸化炭素が発生するため、しゅう酸カルシウムが発熱体や酸化剤に不用意に触れないよう注意が必要です。

参考文献
http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/03077256.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp

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