酢酸アミル

酢酸アミルとは

酢酸アミルの基本情報

図1. 酢酸アミルの基本情報

酢酸アミル (Amyl acetate) とは、有機化合物の一種で、酢酸とアミルアルコールのエステルです。

化学式C7H14O2、分子式CH3COO(CH2)4CH3の分子式で示されます。IUPAC命名則による名称は、「エタン酸ペンチル」です。他の名称に、「酢酸ペンチル」「酢酸n-アミル」「酢酸n-アミルエステル」などがあります。CAS登録番号は、628-63-7です。

分子量は130.18、融点は-71℃、沸点は149℃で、常温では無色透明の液体です。特異臭を持ち、果実臭あるいはナシのような芳香と形容されます。密度は0.876g/cm³です。水に難溶 (溶解度1.7×10-3 mg/L (20℃))ですが、アルコールやエーテルなどの有機溶媒には混和します。

また、1-ペンタノールの異性体の一つ、あるいはそれらの混合物から製造されたエステルも酢酸アミルと称されることがあります。尚、酢酸アミルは引火性があることから、消防法による第4類危険物第2石油類の指定を受ける物質です。

酢酸アミルの使用用途

酢酸アミルの主な使用用途は、溶剤、ラッカーなどが中心です。香料や織物用染料の溶剤、接着剤の製造、油絵具、ラッカー、ニトロセルロースの溶剤などがあります。写真フィルムなどのフィルム調剤、合成プラスチック材料のセルロイドなども用途です。このように、多岐にわたって工業的に活用されています。

また、模造真珠を作る際、ガラスを丸く珠にしたものに外層や中空の内側から吹き付ける液をパールエッセンスと呼びますが、酢酸アミルはこのような塗料液に用いられたりもします。その他、シミ抜き剤の成分として含まれる場合もあります。

酢酸アミルの原理

酢酸アルミの原理を合成方法と化学的性質の観点から解説します。

1. 酢酸アミルの合成方法

酢酸アミルの合成

図2. 酢酸アミルの合成

(上: カルボン酸とアルコールの脱水縮合 / 中: 酸ハロゲン化物とアルコールの縮合 / 下: 酸無水物とアルコールの縮合)

酢酸アミルは、カルボン酸 (酢酸) とアルコール (1- ペンタノール (n‐アミルアルコール) ) 、及び濃硫酸などの酸触媒を用いた通常のエステル合成反応によって合成することが可能です。

また、他のエステル一般と同様、酸無水物や酸ハロゲン化物を用いた合成も可能と考えられます。

2. 酢酸アミルの化学的性質

酢酸アミルの化学反応

図3. 酢酸アミルの化学反応の例 (上: 加水分解 / 下: 還元)

酢酸アミルは、酸または塩基存在下で加水分解を受け、酢酸と1-ペンタノールへ分解されます。また、還元剤である水素化アルミニウムリチウム (LiAlH4) や水素化ホウ素ナトリウム (NaBH4) 、ボラン (BH3) などを用いた反応では、アルコール (エタノールと1-ペンタノール) が生成します。

熱や光には比較的安定です。しかし、硝酸塩、強酸化剤、強塩基、強酸との混合は避けるべきとされます。これらの物質と混触した場合、火災や、爆発の危険を引き起こす可能性があるためです。

引火点は25℃と低く、引火性液体及び蒸気として扱うべき物質です。燃焼によって一酸化炭素二酸化炭素を生じます。 人体に対しては、軽度の皮膚刺激・眼刺激・呼吸器への刺激のおそれがあり、やや有害です。

3. 酢酸アミルの法令による規制情報

酢酸アミルは前述の通り、引火性があり人体に対しても有害な物質です。そのため、各種法令による規制の対象となっています。主なものとして、以下の規制が挙げられます。

  • 労働安全衛生法:「名称等を通知すべき有害物」「名称等を表示すべき有害物」「第2種有機溶剤等」「危険物・引火性の物」
  • 消防法:「第4類引火性液体」「第二石油類非水溶性液体」
  • 船舶安全法:「引火性液体類」
  • 航空法:「引火性液体」

酢酸アミルの種類

市場に供給されている酢酸アミルには、一般的な化学試薬製品や工業用薬品などの種類があります。化学試薬としては、実験室で取り扱いやすい25mL , 500mLなどの容量が主流です。通常、ガラス瓶で扱います。常温で輸送・保管が可能な試薬です。

工業用薬品としては、溶剤類の一種として取引されています。15kg石油缶、180kgドラム缶、1,000Lコンテナなどの大型荷姿で取り扱われることが多いです。工場などに対して納品されています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/0732.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です