Tナット

Tナットとは

Tナットとは、断面形状がT型をしており、T字型溝にはめ込んで部品同士を締結する締結部品のことです。

ナットはボルトやネジとペアで使用して2つ以上の部品を締結します。六角ナット、袋ナット、蝶ナットなど様々な種類がありますが、Tナットは貫通するネジ穴を上下面にして横方向から見ると、T字型に見えます。

Tナットは締結部品をしっかりと定位置に固定できるのが特徴で、工作機械などでも使用されます。ここでは、旋盤などの工作機械のチャックに爪を固定するために使用する、別名ジョウナットとも言われるTナットを中心に説明します。

Tナットの使用用途

Tナットは工作機械のT字型溝に挿入し、部品をしっかりと定位置に固定させるために使用します。

旋盤などの工作機械では、ワーク (被加工物) を固定するためにチャックに、生爪や硬爪などの爪を取り付けます。そして、爪はチャックの締め付けに応じてワークを掴んで保持します。

通常はチャック毎に使用する数のTナットが付随しています。爪をチャックに装着する際には、最初にTナットを爪にボルトで留めてから、チャックの溝にTナットを差し込み、さらにボルトを廻して固定します。

製造現場では、1つのワークを加工する工程で何度か爪を交換する場合が多くあります。一般的に、チャックには3本の爪が使用されるため、爪を交換する都度にTナットを付け替えていると、段取りに費やす時間が多くなり作業効率が低下します。

そこで、予め使用するチャックの数に対して必要となる数のTナットを用意して、それぞれの爪に装着しておき、爪の交換に要する時間の短縮が図られています。

Tナットの原理

一般的に、Tナットを使った部品の締結は、振動や衝撃が加わる場所、振動や衝撃によってナットが緩みやすい場所、高精度な締結が必要な場所などで用いられています。

Tナットを使用してチャックに爪を固定する際には、爪に空けられている穴にボルトを貫通させ、その先にあるTナットにボルトをねじ込みます。爪は上側から見ると細長い形状をしていて、そこに2個の穴が並んで開いています。2点支持でTナットと結合することになるので、締結後はがたつきが発生しません。

Tナットが付いた爪を、チャック側のT溝に差し込み、さらにボルトで固定することで、爪とチャックの締結が完了します。チャックには、マスタージョウというTナット (ジョウナット) の受け側になる、T溝を持った部品が装着されているものと、マスタージョウを使用せずに直にT溝を刻んであるものがあります。

マスタージョウを使用することで、Tナットの取り付けが容易になり、取り付け精度が向上します。その反面、チャックの価格が高くなり、マスタージョウの価格も全体の価格に上乗せになります。

一方、チャックに直接Tナットを結合する場合には、全体の価格を抑えられますが、Tナットの取り付けが難しくなり、精度が落ちる欠点があります。

Tナットの選び方

旋盤おいては、ワークの芯振れを防ぎ高精度な加工を実現するためには、爪をチャックに正確な位置に取り付け、振動したり、ずれたりしないことが必須です。それに対して、加工時にはチャックは高速で回転し、さらにワークにバイト (切削用の刃) を当てることの力や振動も伝わって来ます。

Tナットと、マスタージョウはこれらの力を受け止め、爪の取り付けを正確に保つための重要な締結部品です。使用可能な、爪、Tナット、マスタージョウは、チャックのメーカー毎に異なります。

Tナットを選択する際には、使用するチャックやマスタージョウに合致したものを選択する必要があります。

爪には生爪と硬爪があり、特に仕上げ加工などに使用される生爪は消耗品であり、頻繁に交換が必要になります。しかし、Tナットやそれに使用するボルトは、サイズが適合していれば交換する必要はありません。

但し、ナットやボルトのネジ山が破損していたり、切削クズを挟み込んでいたりすると、精度が低下する危険があります。その際には交換の必要が出て来る可能性もあるので、予備品を用意することも大切です。

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