生爪とは
生爪とは、旋盤などの工作機械のチャックの先端に取り付けて、ワークを固定するための治具です。
旋盤などの工作機械では、ワーク (被加工物) を回転させるために、チャックの先に取り付けた爪でワークを保持します。爪には硬爪と生爪の2種類があります。
硬爪は焼き入れが施され、硬くて成形が難しいため粗削りの段階で使用されます。一方で生爪は焼き入れがされていない金属製で、自由に成形できるため仕上げの段階に使用されます。ワークの形に応じた接触部分の形を作ることができ、星形の断面形状などの異形のワークも固定できます。
生爪の使用用途
生爪は旋盤を始めとする工作機械で、ワークに仕上げ加工を施す段階や、特殊な形状をしたワークを加工する場合に使用します。
汎用旋盤、フライス盤、NC旋盤、ボール盤、マシニングセンターなどの工作機械で使用されており、これらの工作機械ではチャックの先に浸けられた爪でワークを挟み込むように固定します。チャックと爪の関係を人間の手の形で例えるならば、チャックが手のひら、爪が指の役割になります。
爪には硬爪と生爪の2種類がありますが、生爪はワーク毎にしっかりとフィットする爪を成型加工できます。従って、粗削りの段階では硬爪を使い、仕上げ加工には生爪を使うという使い分けがされています。
また、ワークの形状が単純な円柱形や四角柱ではなく、特殊な断面形状を持ったワークの場合や、円錐形のように通常の形状の爪ではうまくワークを掴んで保持することが不可能な場合があります。このような場合には、ワークの形状に合わせた生爪を成型加工して、粗削りと仕上げの両方を生爪で行います。
生爪の原理
旋盤を始めとする工作機械が取り扱うワークの形状や大きさは千差万別です。そこで、チャックに取り付ける爪を取り換えることで、1台の機械で様々な形状や大きさのワークを加工できるようになります。
爪は、ある程度の形状と大きさのものはチャック毎に標準品として用意されています。但し、全てのワークの大きさや形状に完全にフィットする爪を標準品として用意することは不可能なので、ワークに応じて成形加工できる生爪が多く用いられています。
焼き入れ処理が施されて後からの加工が難しい硬爪に対して、生爪は焼き入れがされていないため成型が容易です。そして、ワークをしっかりと掴むことができるためワークの芯振れを防ぎ、より高精度な加工が可能になります。
生爪の種類
生爪は形状や目的に応じて標準爪、小径爪、高爪、幅広爪などに分類されます。
標準爪はチャックを購入するとセットで付いてくる生爪で、一番高さの低い生爪が標準となります。小径爪は文字通り小さい径のワークを掴むための生爪です。高爪は他のものより高さのある生爪で、材質の形状に合わせる以外に、チャックと工具との干渉を防ぐ為にも用いられます。幅広爪は標準よりも幅が広く、大きな被削材を掴むために使用されます。
また、注文に応じて高さ、幅、長さ、形状などを調整するオーダー品のものもあります。生爪は、切削時にワークと一緒に削り取られる場合が多く、一般的に消耗品として取り扱われています。
生爪の選び方
生爪を選ぶ場合は主に下記のポイントに注意することが大切です。
1.材質
生爪の材質は、一般的に鉄やアルミがあり、加工対象の素材に合わせて選びます。現在では鉄が広く使用されていますが、特殊な要件や非鉄金属の加工などに応じて異なる材質を選ぶ場合もあります。
また、特定の作業環境や加工材料が腐食性の高い場合、耐腐食性がある材質の生爪を選択することが大切です。
2. 硬度
硬度は生爪の耐久性や寿命に直結します。硬度が高いほど耐摩耗性が向上しますが脆くなる可能性があるため、加工対象や切削条件に応じて適切な硬度を選定する必要があります。例えば、高硬度の生爪は高速切削や硬い素材の加工に適しています。
また、生爪の硬度は材料の熱処理によっても変化します。正確で一貫性のある硬度を確保するためには、製造プロセスにおいて熱処理が適切に行われていることが重要です。
3. 形状とサイズ
生爪の形状とサイズは、加工する対象物の形状に適している必要があります。例えば、円柱状の対象物には三爪チャックが適している場合がありますが、非対称な形状や複雑な部品の場合は、特殊な形状の生爪が必要です。
生爪の形状が対称であると、加工時の力が均等に分散され、安定して保持できるため対象物が変わるごとに留意します。対象物に対して過大または過小な生爪を使用してしまうと保持が不安定になり、加工品質に悪影響を与えます。
4. 耐摩耗性
生爪は摩擦や切削力にさらされるため、耐摩耗性が十分であることが重要です。
高い回転速度や強い切削力がかかる場合、耐摩耗性が低い生爪は劣化が早く、寿命が短くなります。耐摩耗性を向上させるために表面処理やコーティングが施されている場合もあります。耐摩耗性の高い材料を使用した生爪は長時間の使用に耐え、メンテナンスの頻度を低減させます。