過ヨウ素酸ナトリウムとは
過ヨウ素酸ナトリウム (英: Sodium periodate) とは、過ヨウ素酸のナトリウム塩で、組成式NaIO4で表される無機化合物です。
別名はメタ過ヨウ素酸ナトリウムであり、CAS登録番号は7790-28-5です。過ヨウ素酸イオンの塩には、メタ過ヨウ素酸塩の他に正塩や水素塩などに分類されるオルト過ヨウ素酸塩があります。
過ヨウ素酸ナトリウムの使用用途
過ヨウ素酸ナトリウムの主な使用用途は、過ヨウ素酸源、分析試薬、酸化剤などです。特に、過ヨウ素酸ナトリウムは、様々な化学反応で酸化剤として用いられます。
代表的な酸化反応に、グリコールの酸化開裂があります。開裂反応とは、化学物質に含まれる共有結合を酸化することにより2つの物質へ分解する反応です。
グリコールは脂肪族炭化水素の2つの炭素にヒドロキシ基が結合した化合物ですが、グリコールに過ヨウ素酸ナトリウムを加えると、ヒドロキシ基を持つ2つの炭素間の共有結合が切断されます。これによって、アルデヒドやケトンが生成します。
過ヨウ素酸ナトリウムの性質
図1. 過ヨウ素酸ナトリウムの基本情報
過ホウ酸ナトリウムは、分子量213.89であり、300℃で分解します。常温常圧での外観は、白色の固体です。水には易溶であるものの、エタノールなどの有機溶媒にほとんど溶けません。水への溶解度は3.8g/100mL (6°C) 、密度は3.865g/mLです。
過ヨウ素酸ナトリウムの種類
過ヨウ素酸ナトリウムは、主に研究開発用試薬製品として販売されています。容量の種類は、5g、25g、100g、500gなどであり、実験室で取り扱いやすい容量で提供されています。
通常の保管環境においては安定で、室温で保管可能な試薬製品としての提供が一般的です。
過ヨウ素酸ナトリウムのその他情報
1. 過ヨウ素酸ナトリウムの合成
図2. 過ヨウ素酸ナトリウムの合成
過ヨウ素酸ナトリウムは、硝酸を用いたオルト過ヨウ素酸二水素三ナトリウムNa3H2IO6の脱水反応によって合成可能です。オルト過ヨウ素酸二水素三ナトリウムは、ヨウ素酸ナトリウムを水酸化ナトリウム溶液中で、塩素と反応させることによって合成することができます。
また、オルト過ヨウ素酸二水素三ナトリウムNa3H2IO6は水酸化ナトリウム溶液中で、ヨウ化ナトリウムと臭素を反応させる反応によっても合成可能です。
2. 過ヨウ素酸ナトリウムの化学反応
図3. 過ヨウ素酸ナトリウムを用いた有機合成反応 (1,2-ジオールの開裂)
過ヨウ素酸ナトリウムは、酸化剤として有機合成化学分野で用いられます。水にのみ溶解するため、水溶性の低い有機化合物を基質として用いる場合には、補助溶媒としてはメタノール・エタノール・アセトニトリルが用いられます。
過ヨウ素酸ナトリウムの酸化反応のうち最も汎用されている反応は、1,2-ジオールの開裂反応です。本反応においては、ヒドロキシ基の結合した炭素間の炭素-炭素結合が切断され、対応するアルデヒドまたはケトンを得ることができます。
3. 過ヨウ素酸ナトリウムの危険性と法規制情報
過ヨウ素酸ナトリウムは、火災を助長する恐れのある酸化性物質であり、GHS分類では酸化性固体: 区分2に指定されています。法規制に従った保管及び取扱においては安定と考えられますが、還元剤、金属微粉末との混合物は爆発性があるため還元剤との接触を避けるべきとされます。混触危険物質は、有機物、可燃性物質、還元剤、金属微粉末です。
上記の危険性から過ヨウ素酸ナトリウムは法令で取り扱いが制限されている物質です。消防法では第1類酸化性固体、過ヨウ素酸塩類に指定されています。法令を遵守して正しく取り扱うことが重要です。熱、火花、裸火、高温のもののような着火源から遠ざけ、適切な保護手袋などの保護具を用いることが必要です。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-0240JGHEJP.pdf