硝酸コバルト

硝酸コバルトとは

硝酸コバルトとは、「二硝酸コバルト (Ⅱ) 」および「硝酸コバルト (Ⅱ) 」とも呼ばれている無機化合物です。

無水物、三水和物、六水和物があり、六水和物が市販品として入手可能です。硝酸コバルト六水和物は、PRTR法において「第1種指定化学物質」に指定されています。

また、労働基準法における「疾病化学物質」です。労働安全衛生法において「特定化学物質」「名称等を表示し、又は名称等を通知すべき危険物及び有害物」「危険物・酸化性の物」などに指定されています。このほか、消防法において、「第1類酸化性固体、硝酸塩類」に指定されている物質です。

硝酸コバルトの使用用途

硝酸コバルト六水和物は、石油化学触媒やコバルト触媒の原料をはじめ、コバルト顔料、陶磁器の顔料、熱を加えると色が浮き出るあぶり出しインキの原料、試験試薬として利用されています。

1. 二次電池

硝酸コバルトはニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、燃料電池など、充電式電池の材料として使用されています。ニッケルカドミウム電池では正電極の腐食を防ぐために、原料の硝酸ニッケルに数パーセントの硝酸コバルトを加え1~5重量%のコバルトを含んでいます。

ニッケル水素電池は、5~10重量%のコバルトを含み、近年需要が増大しています。ニッケル水素電池は、環境問題からニッケルカドミウム電池に代わる電池として開発されてきました。

ニッケル水素電池は、ニッケル電極 (正極) と水素吸蔵合金電極 (負極) 、セパレータ、アルカリ性電解液で構成されています。このうちニッケル電極 (正極) の導電剤としてコバルト化合物が利用されています。 

2. 表面処理

硝酸コバルトは、メッキ薬品や表面処理薬品の原料として使用されています。自動車や建材に用いられる合金化溶融亜鉛めっき鋼板やアルミ基板・プリント基板用銅箔のメッキ・表面処理剤として有用です。

硝酸コバルトの性質

硝酸コバルトは、無水物、三水和物、六水和物があり、それぞれ性質が異なります。

1. 無水物

硝酸コバルトの無水物 Co(NH3)2 は、融点100〜105℃で、常温において赤色の固体です。六水和物に五酸化二窒素 (N2O5 )を反応させる、あるいは液体アンモニア中で硝酸銀と微粉末状のコバルトを反応させる方法で得られます。

2. 六水和物

硝酸コバルトの六水和物 Co(NH3)2・6H2O は、融点55℃で、常温において赤色の固体です。55℃以上で水3分子を失うことから、水溶液を加熱すると、55℃以下において六水和物、55℃以上において三水和物が析出します。

硝酸コバルトの六水和物は常温では赤い結晶で、水に溶けやすく、水溶液は赤褐色の酸性の液体です。湿った空気中では潮解性を示します。潮解とは、固体が空気中の水分を吸収して次第に溶解していく現象です。

 

硝酸コバルトは、アルコールやアセトンなどの有機溶媒にも溶けます。可燃性ではありませんが、触媒の性質を持ち、他の物質の燃焼を加速する働きがあります。

硝酸コバルトのその他情報

1. 硝酸コバルトの製造方法

硝酸コバルトは金属コバルト、酸化コバルト、水酸化コバルト、炭酸コバルトに希硝酸を加えることで生成されます。

  • Co + 2HNO3 → Co(NO3)2 + H2
  • Co(OH)2 + 2HNO3 → Co(NO3)2 + 2H2O
  • CoCO3+ 2HNO3→ Co(NO3)2 + CO2 + H2O

2. 硝酸コバルトの安全性情報

硝酸コバルトを扱う場合は、マスクとコーグル、手袋を必ず着用してください。素手では触らないでください。潮解性があるので、密閉容器に入れて保存します。また、化剤、有機物質と接触すると火災の危険性が高いため、可燃物との接触は避けてください。

皮膚についてしまった場合は、流水と石鹸で洗い流してください。目に入ってしまった場合は、数分間流水で洗い流します。吸引してしまった場合や飲み込んでしまった場合は、直ちに医師に連絡してください。

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