炭酸ジエチル

炭酸ジエチルとは

炭酸ジエチルの基本情報

図1. 炭酸ジエチルの基本情報

炭酸ジエチルとは、炭酸の中性エステルの一種で、エーテル臭をもった化合物です。

常温で無色の液体であり、低引火点の物質です。別名、ジエチルカーボネート (英: diethyl carbonate) とも呼ばれます。労働安全衛生法にて「危険物・引火性の物」に、消防法にて「第4類引火性液体」に、それぞれ指定されており、取り扱いには注意が必要です。 

炭酸ジエチルの使用用途

炭酸ジエチルは、「ニトロセルロースや合成樹脂用の溶剤」「反応溶媒」「洗浄剤」「剥離剤」「燃料添加剤」などとして用いられています。また、「リチウムイオン電池の電解質溶媒」としても利用可能です。

他にも、エトキシカルボニル化などの「有機合成原料」に加えて、ポリカーボネートポリウレタンなどの「樹脂原料」としても使用されています。エノラートアニオン・アリール・シアン化アルキルの、C-アルコキシカルボニル化に用いることが可能です。

炭酸ジエチルは、1,2-アミノアルコールと反応させることによって、2-オキサゾリジノン (英: 2-oxazolidinone) の生成に利用されることもあります。

炭酸ジエチルの性質

炭酸ジエチルの融点は-43℃、沸点は126-128℃です。水には溶けず、エタノールクロロホルム、エーテルなどの有機溶媒には溶けやすいです。引火点は25℃、発火点は445℃です。化学式はC5H10O3、モル質量は118.13g/molです。密度は0.975g/cm3で、示性式は(C2H5O)2COと表せます。

また、炭酸ジエチルは炭酸とエタノールから構成される炭酸エステルです。炭酸エステルは、炭酸の水素原子2個をアルキル基に置き換えた構造を有しています。

炭酸ジエチルのその他情報

1. 炭酸ジエチルのホスゲンや尿素を用いた合成法

炭酸ジエチルの合成

図2. 炭酸ジエチルの合成

炭酸ジエチルは、ホスゲン (英: phosgene) とエタノールの反応によって生成します。副生成物として、塩化水素が生じます。ホスゲンはクロロホルムと酸素の反応で得られるため、エタノールに対して100等量のクロロホルムを加えることで、クロロホルムを保存用として用いることが可能です。

それ以外にも、尿素 (英: urea) をエタノールで分解し、炭酸ジエチルを合成できます。カルバミン酸エチル (英: ethyl carbamate) が中間体として形成されて、反応が進行します。尿素とエタノールの反応には、ルイス酸と塩基として機能する不均一系触媒に、金属酸化物などが必要です。

2. 炭酸ジエチルのその他合成法

炭酸ジエチルは、ヨウ化エチルに炭酸銀を作用させることで生成できます。また、一酸化炭素による酸化的カルボニル化反応によって、二酸化炭素とエタノールから直接合成可能です。さらに、炭酸ジメチル (英: dimethyl carbonate) のエステル交換 (英: transesterification) でも、炭酸ジエチルを得られます。

そのほか、パラジウムなどの触媒を使用して、亜硝酸エチル (英: ethyl nitrite) と一酸化炭素の反応でも生成します。この反応に用いる亜硝酸エチルは、一酸化窒素とエタノールから合成可能です。

3. 炭酸ジエチルの関連化合物

炭酸ジエチルの関連化合物

図3. 炭酸ジエチルの関連化合物

炭酸ジエチルは、炭酸エステルの一種です。炭酸エステルの具体例として、炭酸ジメチルや炭酸ジフェニル (英: diphenyl carbonate) などが挙げられます。それに加えて、炭酸エステルには、炭酸エチレン (英: ethylene carbonate) や炭酸プロピレン (英: propylene carbonate) のような環状エステルも存在します。

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