イソシアヌル酸

イソシアヌル酸とは

イソシアヌル酸 (英: cyanuric acid) とは、尿素を原料として合成される有機化合物です。

常温常圧では無色の結晶性の固体です。化学式はC3H3O3N3、モル質量は129.1g/mol、融点は320から360℃で分解されます。CAS番号は108-80-5です。カルボニル基を3つもつトリオン構造となっているため、ケト型とエノール型という2つの構造の平衡状態にあります。そのうち、エノール型のものをシアヌル酸、ケト型のものをイソシアヌル酸と呼びます。

イソシアヌル酸の性質

イソシアヌル酸は尿素が3分子重合した分子です。

尿素をおよそ200℃まで加熱することで、シアヌル酸にアンメリンやアンメリドなどが混ざった混合物が得られ、塩酸硫酸などの無機強酸を加えることによって、他の物質をイソシアヌル酸に変換し、純度の高いイソシアヌル酸を得ることができます。

イソシアヌル酸は水、アセトンにはほとんど溶けず、エーテルやアルコールなどの有機溶媒に少量溶けます。また、ピリジンや熱水に対する溶解度は高いです。

イソシアヌル酸の使用用途

イソシアヌル酸はそのままで使用されることはほとんどなく、誘導体に変換されたのちに利用されています。イソシアヌル酸の誘導体のうち、工業的に利用されているものにはトリクロロイソシアヌル酸(塩素化イソシアヌル酸)やメラミンシアヌレートがあります。

1. 塩素化イソシアヌル酸

塩素化イソシアヌル酸は、イソシアヌル酸の水素原子をいくつか塩素原子で置換することで得られる物質で、3つ置換されたものはトリクロロイソシアヌル酸、2つ置換されたものはジクロロイソシアヌル酸という名称です。

塩素化イソシアヌル酸は白色の結晶性固体で、強い塩素臭を持っています。水溶性を高めるために、ナトリウム塩やカリウム塩の形で使用されることも多いです。

トリクロロイソシアヌル酸とジクロロイソシアヌル酸を比較するとトリクロロシアヌル酸の方が水に溶けにくく、ナトリウム塩とカリウム塩を比較するとカリウム塩の方が溶けにくいという特徴があります。そのため、用途に応じて適切な化合物を選ばことが重要です。

水に触れると、素早く次亜塩素酸とシアヌル酸に分解されます。次亜塩素酸は強力な酸化剤であり、殺菌作用を持ちます。そのため、主にプールや公衆浴場などの水を消毒する殺菌剤、あるいは洗剤や漂白剤として利用されてきました。無機水処理剤に比べ、塩素が長い時間をかけてゆっくりと溶けだす特徴があります。

人間の体内の組織への蓄積性は低く、すぐ排泄されるため毒性は低いとされていますが、分解して塩化水素、次亜塩素酸、酸化窒素などの有害な気体を発生させる可能性があるため、保管には注意が必要です。殺菌剤以外の用途としては、有機化学実験における塩素化剤や、ウールの縮毛防止剤などがあります。

2. メラミンシアヌレート

メラミンシアヌレートは、イソシアヌル酸とメラミンを反応させることで得られる物質です。メラニンとシアヌル酸が水素結合のみを介して塩を形成しており、両者の間に共有結合は形成されていません。水は溶けませんが、有機溶媒に分散しやすい性質を持っています。常温、常圧では結晶性の白色固体で、白色系の固体潤滑剤として使用されています。

また、熱による分解過程においてカーボンフォーム層が形成され、この層は熱と酸素を遮断する働きが見られます。ハロゲンを含んでおらず、分解の際にも煙がほとんど出ず、窒素や二酸化炭素、アンモニアといった毒性の低い気体のみを発生させるため、環境にやさしい難燃剤として注目されています。常温の乾燥した環境で保存する必要があります。

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