リニアモーターとは
リニアモーター (英: linear motor) とは、直線運動をする電気モーターのことです。
一般的なモーターが回転運動を発生させるのに対し、リニアモーターは直線運動をします。磁石の吸引・反発、あるいはローレンツ力を利用して推進力を発生させる駆動装置です。
従来のモーターを使用して直線方向に駆動するには、様々な部品の組み合わせが必要ですが、リニアモーターによって煩雑な仕組みを使用しなくても、直線運動を容易にできます。
リニアモーターの使用用途
リニアモーターの応用として、良く知られているのはリニア新幹線を始めとするリニアモーターカーです。リニア新幹線などは、磁石の反発により車体はレール上に浮遊しているため、摩擦力による駆動力のロスが極めて少ない点が特徴です。そのため、高速で移動することができます。
東京都の都営地下鉄大江戸線や、神戸市営地下鉄海岸線などの車両は浮上式ではありませんが、駆動するのはリニアモーターです。近年、産業機器などの駆動部にリニアモーターを採用する例が増えています。
精密さが必要な工作機械や半導体製造装置、宇宙船、加速器、リニアモーターガンなどに使用される場合が多いです。民生品では、自動車用電動カーテン、ひげそり器、カメラのオートフォーカス、回転すし店などが事例として挙げられます。
リニアモーターの原理
リニアモータは、磁石の吸引・反発又はローレンツ力を駆動原理としています。この点は従来のモーターと同様ですが、リニアモーターは直進運動を発生させるために、従来のモーターを切り開いたような構造です。
動作原理により、リニア誘導モーター、リニア同期モーター、リニア直流モーター、リニアステッピングモーターなど多くの種類があります。
1. リニア誘導モーター
誘導モーターと同様の原理、即ち電磁誘導によるローレンツ力を駆動力とする方式です。磁極がNS-SNと並んだ磁石上に電磁石を配置し、電流を流すことで駆動します。高精度が必要な産業用のリニアモーターには、この方式が多く使われます。
2. リニア同期モーター
同期モーターと同様の原理、即ち磁極同士の吸引・反発力を利用する方式です。直線的に並んだ固定磁石の磁極を可動電磁石の運動に合わせて変化させることにより、直線運動の駆動力を得る方式です。
リニア同期モーターは、他の方式に比べ、効率が高い特徴があります。リニアモーターカーでは、電力消費を抑えるために多くは同期モーターです。なお、磁気浮上式のリニアモーターカーでは、車体側の電磁石に、超電導磁石を使用することで電力の供給を最小限に抑えます。
3. その他の方式
リニア直流モーターは、アクチュエータ等に使用されます。リニアステッピングモーターの用途は、カメラのオートフォーカスをはじめとする光学機器等の精密制御です。また、ピエゾ素子によって駆動するリニア圧電モーターは、効率は低いですが高精度の制御が可能で、精密機械等に使用されます。
リニアモーターのその他情報
1. リニアモーターの速度と精度
リニア新幹線への応用では、高速化のメリットが大きく、リニアモーターの性能面や制御技術の開発が進んで実用化の目途が付いています。リニアモーターのメリットは、減速機構が不要で高精度送りが可能であること、長軸化・複数モーターを配置し同時に稼働できることなどです。
一方、デメリットは、外乱影響の制御が難しい、高推力が得にくい、点検保守が難しいなどがあるが、年々改良が進んでいます。このような状況の中で、高速化とともに、高精度化が注目されるようになり、研削盤や旋盤などの工作機械への活用が進んでいます。さらにリニアモーターは、環境保全の観点から、今後の可能性として、油圧式の大型機械への採用などです。
2. 超電導リニアの冷却について
磁気浮上式のリニアモーターカーの駆動に多いのは、超電導磁石を使用する事例です。4K (-269℃) の低温では電気抵抗がゼロになる超電導現象を利用することにより、電気エネルギーのロスがなく、強力な磁界を発生することができます。
常に超電導状態を維持するためには、冷却する仕組みを搭載する必要があり、従来は、液体ヘリウムを使って冷却しています。価格や大掛かり装置がデメリットです。近年、超電導磁石を構成するコイルの材料を変更することにより、液体ヘリウムを使わずに直接冷却することが可能になってきました。
使用される材料は、ビスマス系銅酸化物で、超電導状態になる温度が従来より高く、20K (-253℃) の冷却で可能です。高温超電導磁石と呼ばれる磁石です。高温超伝導磁石を冷却する為の装置は、断熱膨張を利用して直接材料を冷却する方式を採用し、軽量・コンパクト化が図られています。
参考文献
https://www.sodick.co.jp/st/tech/linear_motor.html
https://www.pulsemotor.com/feature/shaftmotor2.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/75/2/75_2_242/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsj/39/12/39_12_651/_pdf
https://diamond.jp/articles/-/234426?page=2
https://www.jp.tdk.com/tech-mag/ninja/123