トリメチロールプロパン

トリメチロールプロパンとは

トリメチロールプロパンとは、常温において無色~白色の微臭の固体の有機化合物です。

製品形状としては粉末状のものからペレット状のものがあり、TMPという略称で呼ばれています。そのほか、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオールまたは1,1,1-トリス・ (ヒドロキシメチル) プロパンという別名もあります。

水には完全に溶解し、アルコール、アセトンには易溶、四塩化炭素、クロロホルム、エーテルには可溶、芳香族炭化水素類には難溶です。可燃性であるほか、強酸化剤と激しく反応するため、使用と保管の際には避ける必要があります。

トリメチロールプロパンの使用用途

トリメチロールプロパンの使用用途として、アルキド樹脂、ポリウレタン、可塑剤、界面活性剤、湿潤剤、繊維加工剤、写真薬原料などのポリマー原料や合成原料、中間物などが挙げられます。3つの水酸基を持つため、アクリル酸とエステル化により結合させることでラジカル重合用の架橋剤や、水酸基とイソシアネート基 (-N=C=O) が反応してウレタン結合を形成することから、ウレタン樹脂の架橋を行う際に用いられるケースが多いです。

トリメチロールプロパンの2つの水酸基にアリル基 (-CH2CH=CH2) をエーテル結合で付加させたトリメチロールプロパンジアリルエーテルも市販されており、不飽和ポリエステル樹脂やアルキド樹脂の成分、その他樹脂の架橋剤などにも用いられています。

トリメチロールプロパンの性質

TMP構造、物性

図1. トリメチロールプロパンの分子構造と物性

トリメチロールプロパンは、プロパン (CH3CH2CH3) の片末端の炭素にメチロール基 (-CH2OH) が3つ結合した分子構造をとっています。分子内に水酸基が3つある低分子という点でグリセリンと似ていますが、グリセリンの場合、水酸基3つのうち、2つが1級水酸基、1つが2級水酸基であるのに対して、トリメチロールプロパンは3つすべてが1級水酸基であり、いずれの水酸基の反応性もほぼ同等です。

トリメチロールプロパンのその他情報

1. トリメチロールプロパンの製造方法

TMP反応式

図2. トリメチロールプロパンの製造方法

トリメチロールプロパンの製造する際、原料はブチルアルデヒド、ホルムアルデヒド水酸化ナトリウムを使用します。具体的な手順は、以下の通りです。

  1. 原料を混合して、40~50℃で約3時間反応させます。
  2. この混合物からトリメチロールプロパンを分離するために、有機溶媒を追加して油相側にトリメチロールプロパンを抽出させます。
  3. 水相を除去した後、油相を減圧蒸留します。 (高純度のトリメチロールプロパンを得ることができます。)

1の段階で反応生成物をpH7までギ酸または酢酸で中和し、水分を蒸発濃縮すれば、ギ酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウムとトリメチロールプロパンの濃縮混合物ができます。

2. トリメチロールプロパンの諸物性および安全性

その他物性と安全性

図3. 諸生物及び安全性

トリメチロールプロパンは、常温では無色から白色の結晶性の固体で、粉砕することで微粉末にすることも可能です。引火点や発火点はいずれも高く、火災の原因となる危険性は高くはありません。

急性毒性は強い部類ではありませんが、生殖能、胎児への影響の恐れの疑いありとされているため、取扱いには注意が必要です。常温・常圧の保管条件下で安定し、重合及び分解しないことからも、不活性ガスを充填し、湿気のみ注意して保管すれば問題ないと言えます。

また、容易に生分解されず、生物蓄積性が低いことから環境への負荷も小さいとして、世界中で年間数億トンものトリメチロールプロパンが生産されています。

参考文献
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/T0480
https://www.ilo.org/dyn/icsc/showcard.display?p_lang=ja&p_card_id=0366&p_version=2
https://dra4.nihs.go.jp/mhlw_data/home/pdf/PDF77-99-6d.pdf

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