トリメチルアルミニウムとは
図1. トリメチルアルミニウムの基本情報
トリメチルアルミニウム (Trimethylaluminium, TMA) とは、有機アルミニウム化合物の一種で、化学式 C6H18Al2で表される化合物です。
分子式では(CH3)3Alと記されますが、実際にはメチル基を介して2量体を形成した状態にあるとされています。CAS登録番号は、75-24-1です。分子量は144.18、融点は15℃、沸点は125℃であり、常温では密度0.752g/mLの無色透明の液体です。
ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族飽和炭化水素、トルエン、キシレンなどの有機溶媒に混和します。揮発性物質です。水や空気に対して不安定であり、自然発火性があります。引火点が-18℃と低く室温で発火します。
消火活動の際も注水は厳禁です。消防法では、「第3類 自然発火性物質及び禁水性物質 アルキルアルミニウム 危険等級 – I」に指定され、労働安全衛生法では危険物 (引火性の物) に指定されています。
トリメチルアルミニウムの使用用途
トリメチルアルミニウムの使用用途は、トリメチルガリウム (TMG) 製造原料やMO-CVDの材料、シリコン半導体ドープ材原料などです。これらは、LEDや半導体の製造に役立てられています。その他に、高純度酸化アルミの前駆体として、用いられることもあります。
また、有機合成化学においては、テッべ試薬 (カルボニルをエキソオレフィンに変換することができる) の原料や、チーグラー・ナッタ触媒 (オレフィン重合化触媒) に用いられるなど、合成上有用な化合物です。
トリメチルアルミニウムの原理
トリメチルアルミニウムの原理を化学的性質の観点から解説します。
1. トリメチルアルミニウムの化学的性質
図2. トリメチルアルミニウムの化学的性質
トリメチルアルミニウムは前述の通り、メチル基を介して2量体を形成した状態にあるとされています。また、トリメチルアルミニウムは、アルキルアルミニウム類の中でも反応性が高く、加水分解熱が大きい物質です。
水と接触すると直ちに酸化されて、同時に発火します。それ以外にも、酸類、空気、アミン類、可燃性物質、ハロゲン化炭素、ハロゲン類、酸化剤との混触は厳禁です。不活性ガス中もしくは、炭化水素系溶媒中で取り扱います。
2. 有機金属化学におけるトリメチルアルミニウム
図3. 有機金属化学におけるトリメチルアルミニウム
トリメチルアルミニウムは、多くの金属ハロゲン化物にメチル基を導入するのにも用いられる物質です。例えば、塩化ガリウム (III) と反応して、トリメチルガリウムを与えます。このような性質を利用して、チーグラー・ナッタ触媒 (オレフィン重合化試薬) や、テッべ試薬 (カルボニルをエキソオレフィンに変換することができる) では、塩化チタンの活性化に用いられています。
トリメチルアルミニウムの種類
トリメチルアルミニウムには研究開発用の有機合成化学用試薬製品や、工業用化学薬品製品などの種類があります。空気中で自然発火するため、実験室用の試薬製品では通常、ヘキサンまたはトルエン溶液の状態で取り扱われます。濃度1.0mol / L , 1.4 mol / L , 2.0mol / Lなどが一般的で、容量は100mL, 800mL , 1Lなどがあります。
これらの溶液製品においても、加水分解しやすく水と接触すると容易に沈殿を生じます。そのため、このような試薬を採取する場合は、よく乾燥して窒素を充填した注射器等を用いることが必要です。
工業用では、純粋な化合物が半導体工場などに対して材料として供給されています。製品には25g , 100g , 300g , 600g , 100mLなどの容量があり、大変危険なため乾燥剤入りの専用のペール缶で取引されています。
参考文献
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/guide/magazine/166/contents/166_49.pdf
https://internal.fdma.go.jp/kiken-info/material/m_00946.html
https://www.entegris.com/
https://www.ube-ind.co.jp/ube/jp/sustainability/rc/pdf/sds75-24-1_20160602.pdf