波面センサー

監修:Micro-Epsilon Japan株式会社

波面センサーとは

波面センサーとは、光波の位相の異常 (波面収差) を測定するために使用されるセンサーです。

シャック-ハルトマンセンサーなどとも呼ばれます。このセンサーは光学系内で生じる波面の収差や歪みを検出し、その情報をフィードバックして補正するために広く利用されています。

波面センサーは、光学系内の波面の収差や歪みを高精度に測定できます。これにより、顕微鏡やレーザーなどの光学装置を正確に調整し、最適な性能を発揮させることが可能です。高解像度画像や精密な光学測定を可能にし、新たな発見や理解を促進します。

また、光学系の性能を連続的にモニターし、フィードバック制御に使用されます。これにより、システムが異常な収差を検出し、デフォーマブルミラーや空間変調器などを利用すると自動的に調整して最適な波面を維持することが可能です。ただし、使用する際は高度な光学知識と専門的な技能が必要です。正確なセンサーのセットアップ、データ解析、および補正手法の実施が必要です。

波面センサーの使用用途

波面センサーは、光学系や光学装置における様々な用途で使用されます。

1. 天文学

天文学では、望遠鏡や宇宙望遠鏡の調整と性能向上に波面センサーが使用されます。大気中の乱れや屈折率の変化によって生じる波面の歪みを補正し、星や銀河などの観測を高精細度に行うことが可能です。これにより、銀河や宇宙の遠くの天体をより詳細に観測できます。

2. 顕微鏡

生物学や医学の分野では、高解像度の顕微鏡で微細な生体試料を観察する際に波面センサーが使用されます。本センサーは生物サンプルの詳細な構造を可視化することを可能にする機器です。これにより、細胞や生体分子の研究に貢献しています。

3. レーザー加工

レーザー加工装置において波面センサーはレーザー光の品質を評価し、必要に応じて補正します。また、光学的な調整を精密にするために、調整治具として使用することが可能です。これにより、高精度のレーザー切断や穴あけ、マーキングなどの加工を実施することが可能です。

4. レーザー通信

空間レーザー通信システムは、通信中に光の位相や波面が変動することがあります。これにより、信号の品質劣化が発生する可能性があるため注意が必要です。波面センサーは伝送パフォーマンスを監視し、波面の歪みや収差を測定します。これにより、通信品質を維持し、必要に応じて補正を行うことができます。

波面センサーの原理

波面センサーは光学系内の波面の収差や歪みを測定するための装置です。波面センサーは波面全体の空間を測定し、これを解析して波面の歪みを測定する動作原理です。マイクロレンズアレイやイメージセンサーで構成されます。

最も重要な要素は、マイクロレンズアレイです。このアレイは入射した光を多数の小さな領域に分割し、特定の点に収束させます。入射光の波面の空間位相に基づいて、各スポットの位置が微妙に変化します。

マイクロレンズアレイからの収束した光は、イメージセンサー上に投影されます。イメージセンサーは各スポットの位置を検出するセンサーです。理想的な入射光によって収束されたスポットは、各スポットの中心位置を記録します。

測定対象入射光によってイメージセンサーで検出されたスポットの位置は、理想的な位置からのずれです。これらのずれから、入射光波の空間位相差を計算します。位相差は波面の歪みや収差を示す指標として使用可能です。多くの場合、ゼルニケ多項式にフィッティングした形で出力されます。

波面センサーの選び方

波面センサーを選ぶ際には、使用要件に合った適切なモデルを選択することが重要です。以下は波面センサーを選ぶ際に考慮すべき主要な要因です。

1. 目的

波面センサーをどのような目的で使用するかを明確にします。例えば、望遠鏡の収差補正やレーザー通信の品質管理など、用途ごとに異なる要件があります。

2. 精度

一部の用途では、極めて高精度な波面測定が必要です。特に、物理学や天文学などへの応用の場合は、測定精度は重要な要素です。必要な測定精度を確認し、用途に見合う制度を選定します。但し、透過波面はISOで規定のされていない項目となります。メーカー毎の規定となりますので、各メーカーに確認をすることが必要となります。

3. 光源と波長

波面センサーは特定の波長範囲に対応するものがあります。使用する光源の波長が、センサーに合致していることを確認します。センサーが光源波長の波長範囲をカバーしていない製品であった場合、正確な測定ができないため注意が必要です。

4. 形状

使用する光学系のサイズや形状に合わせて、適切な波面センサーを選びます。一般的に大型の光学系には大型のセンサーが必要ですが、小型の光学系にはコンパクトなセンサーが有利です。

大型の望遠鏡や宇宙望遠鏡には大口径のセンサーが必要であり、ドローンのカメラやセンシング装置には、小型のセンサーが使用されることが多いです。ただし、小型レンズでも高度な非球面形状を持ったレンズの計測では、逆に大型のセンサーが必要となります。

5. 補助光学系

波面センサーを使用する際には多くの場合、拡大・縮小・減衰等を行う補助光学系が必要となります。正しい光学系を選定し組み合わせることで、精度の高い計測が可能となります。

本記事は波面センサーを製造・販売するMicro-Epsilon Japan株式会社様に監修を頂きました。

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