原子吸光光度計

原子吸光光度計とは

原子吸光光度計は、金属元素の濃度を高精度に測定する分析装置です。

試料中に含まれる特定の金属元素の濃度を、高感度かつ高精度に定量計測するための分光分析装置です。金属原子は固有の吸収線を持っており、その吸収度合いを検出することで微量域まで定量できる点が大きな特徴です。この原理により、ppmからppbレベルの微量な元素まで検出可能で、製品の安全基準、環境規制、および品質管理が厳格に求められる分野で広く活用されています。

定量的な測定のために、原子化された目的元素による光の吸収と、試料中の共存成分によるバックグラウンド吸収を正確に分離する必要があります。このバックグラウンド吸収を除去するゼーマン補正法などの補正技術と、高感度な検知法の組み合わせにより、分析の精度や検出下限値が変わってきます。

原子吸光光度計の使用用途

原子吸光光度計は、以下のような用途で使用します。

1. 環境水・土壌中の重金属分析

河川水、地下水、工場排水、および土壌に含まれるカドミウム、鉛、ヒ素、水銀といった有害重金属の濃度測定に用いられます。各国・地域の環境基準や排水基準をクリアしているかを確認するための法定分析手法として位置づけられており、環境負荷の監視と公衆衛生の保護に不可欠な役割を担っています。

2. 食品および医薬品の品質・安全性管理

食品に含まれるミネラル成分の栄養価分析や、残留する微量な有害金属の検出に使用されます。また、医薬品の原料や製品中の重金属不純物が規格基準値を満たしているかを分析するためにも不可欠です。消費者の健康と安全を保証するためのトレーサビリティと品質保証体制の根幹を支えています。

3. エネルギー産業における設備管理と品質検査

石油・天然ガス産業や原子力産業において、燃料油や潤滑油に含まれる微量金属成分の分析に利用されます。例えば、タービンやエンジンの潤滑油中の摩耗金属 (鉄・銅・クロムなど) を定期的にモニタリングすることで、設備の異常摩耗や故障を予知し、プラントの安定稼働と安全管理に貢献します。また、太陽光パネルの部材や電池材料の品質検査にも応用されます。