過塩素酸ナトリウム

過塩素酸ナトリウムとは

過塩素酸ナトリウムとは、化学式NaClO4で表される過塩素酸のナトリウム塩です。

過塩素酸ソーダとも呼ばれ、塩素酸ナトリウムの電気分解によって得られます。過塩素酸塩の1種で、過塩素酸塩に共通する酸化剤としての性質と、水溶液にしたときにイオン半径が大きい陰イオンとしてふるまう性質を有しています。

CAS登録番号は無水物が7601-89-0、1水和物が7791-07-3です。

過塩素酸ナトリウムの使用用途

過塩素酸ナトリウムの工業的な使用用途は、主に他の過塩素酸塩の製造です。過塩素酸塩の中でもナトリウム塩は水への溶解度が高いため、この水溶液に塩化カリウム塩化アンモニウムを加えることにより、過塩素酸カリウム過塩素酸アンモニウムを析出させ、得ることができます。

その他、酸化剤や火薬、合成樹脂の安定化助剤も用途の1つです。また、分析用試薬として核酸抽出や高速液体クロマトグラフィー (HPLC) の溶離液にも用いられます。

過塩素酸ナトリウムの性質

1. 外観・溶解性

白色の結晶性粉末で、水やアルコールに溶けやすい性質です。結晶は潮解性を有します。

2. 酸化力

他の過塩素酸塩と同様に、酸化力の源は、含まれる塩素が塩素原子の最高酸化状態 (7価) であることです。自身が還元され、周囲の物質を酸化する性質を持ちます。

3. 加熱したときの性質・火災危険

200℃以上で分解し、酸素を発生させます。有機物と共存すると、その有機物を酸化することで火災の原因となります。

さらに、火災時には熱分解して酸素を発生することで火災の拡大を助長します。

4. カオトロピック

過塩素酸イオンは、カオトロピックイオンとしての性質があります。カオトロピックとは、水分子の相互作用によって作られる水分子のつながり構造を不安定化する性質です。

この性質を利用して、高濃度の過塩素酸ナトリウムを用いてタンパク質や核酸を精製することができます。例えば、水分子のネットワークを乱すことで、タンパク質が本来持っている高次構造をとりにくくし、水への溶解性を下げてタンパク質を沈殿として回収できます。

核酸の精製方法の要点は、核酸のリン酸基が水和しにくくすることです。過塩素酸ナトリウムを加えてリン酸基の水和を妨げ、水和していないむき出しのリン酸基をシリカなどの担体と相互作用させ、吸着することで精製します。

過塩素酸ナトリウムのその他情報

1. イオンペア液体クロマトグラフィー

過塩素酸ナトリウムは、イオンペア液体クロマトグラフィーのイオンペア試薬としても用いられます。これは、他の過塩素酸塩と同様に、過塩素酸イオンが有機陽イオンと安定に会合 (イオンペア形成) しやすい性質があることによります。

分析対象の有機陽イオンがイオン半径の大きい過塩素酸イオンとイオンペアを形成することにより、有機陽イオンと分析カラムとの好ましくない相互作用を抑制し、分析性能を向上させることができます。

2. 危険性・有害性

酸化性固体であり、有機物と共存することで火災の原因になるほか、火災を爆発的に拡大する危険性を持っています。

皮膚腐食性/刺激性、眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性を有し、人体に有害です。また、単回の曝露で気道刺激を、長期の反復する曝露により、血液系の障害を生じる可能性があります。

3. 環境影響

過塩素酸塩は低濃度では安定であるため、環境中に長期間存在し、悪影響を及ぼすと考えられています。そのため、環境排出が無いように管理することが必要です。

4. 関係法令

消防法では、第1類酸化性固体過塩素酸塩類、危険等級Ⅰに分類されます。労働安全衛生法においては、危険物・酸化性の物 (施行令別表第1第3号) に該当し配慮が必要です。

危険物船舶輸送及び貯蔵規則では、酸化性物質、航空法でも酸化性物質に該当します。化学物質排出管理促進法では、第1種指定化学物質に該当しています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0119-0925JGHEJP.pdf

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