炭酸アンモニウム

炭酸アンモニウムとは

炭酸アンモニウムとは、炭酸のアンモニウム塩で化学式(NH4)2CO3で表される化合物です。

分子量114.1の一水和物(NH4)2CO3・H2Oのみが知られており、無水和物は得られていません。通常、炭安とよばれる市販品は、炭酸カルシウム硫酸アンモニウムの混合物を加熱して、昇華させることにより製造されたもので、炭酸水素アンモニウムとカルバミン酸アンモニウムの複塩あるいは混合物です。

この化合物を濃アンモニア水に溶かした後、冷暗所に数日間放置すると、炭酸アンモニウムの一水和物が得られます。

炭酸アンモニウムの使用用途

炭酸アンモニウムは、各種アンモニウム塩の製造原料、分析用試薬、緩衝剤、中和剤、pH調整剤となるほか、制酸剤など医薬品としても用いられています。

また、アンモニウムイオンによる刺激臭から、必要なときに砕いて使用する気付け薬として用いられていました。また、baker’s ammonia (パン屋のアンモニア)としても知られ、かつては、ふくらし粉の用途にも使われていました。

その他、発泡剤や接着剤 (カゼインの可溶化剤) なども用途の1つです。

炭酸アンモニウムの性質

炭酸アンモニウムは、CAS番号506-87-6で表わされます。白色で特異臭があり、結晶〜結晶性粉末、または塊です。

融点および引火点、可燃性に関するデータはありません。水に溶けやすく、水溶液のpHは塩基性を表します。空気中でアンモニア臭を発し、徐々に分解する性質がありますが、通常の処理において危険有害反応性はありません。

加熱、分解によって、危険有害な分解生成物として一酸化炭素 (CO) 、二酸化炭素 (CO2) 、アンモニアを発生させる危険性があります。危険有害高温と直射日光を避け、強酸化剤との接触を避けます。

炭酸アンモニウムのその他情報

1. 安全性

GHSにおいて、皮膚腐食性/刺激性区分2、眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性区分2A、特定標的臓器毒性 (単回ばく露) 区分3 (気道刺激性) に分類されています。

特に、皮膚刺激性、強い眼刺激性、呼吸器への刺激のおそれがることから、取り扱い時は注意が必要です。保管時は、直射日光を避け、換気のよいなるべく涼しい場所に密閉して保管します。また、容器はガラス製を使用し、強酸化剤と離れた場所で施錠し保管します。

2. 応急処置

吸入した場合は、新鮮な空気のある場所に移し、皮膚に付着した場合は、直ちに石鹸と大量の水で洗浄し、いずれも症状が続く場合には、医師に連絡し適切な処置が必要です。

眼に入った場合は、数分間洗浄を行い、コンタクトレンズを装着していて、容易に取り外せるなら、取り外します。洗浄を行った後、直ちに医師の手当てが必要です。

万が一飲み込んだ場合は、意識のない人の口には何も与えず、直ちに医師もしくは毒物管理センターに連絡します。

3. 取扱方法

作業場所は、屋内での使用の場合は発生源の密閉化、または局所排気装置を設置します。取扱い場所の近くに安全シャワー、および手洗い・洗眼設備を設け、その位置を明瞭に表示します。

作業者は、防塵マスク、保護手袋、側板付き保護眼鏡 (必要によりゴーグル型または全面保護眼鏡) 、長袖作業衣の着用が必要です。産業衛生および安全の基準に基づいて取り扱い、特に酸性物質との接触を避けて作業を行います。

4. 市場規模

炭酸アンモニウムは、世界的な市場においては、食品および医薬品グレードと、工業グレードの製品に分類されます。現状では、中国、インドなどの振興経済国においては、肥料製造用の添加剤として使用されており、需要が非常高まっています。

北米では、医薬品および特殊食品用途での需要が多いです。欧州、食品製造産業において、酸性度調整剤として利用されていることに加え、中東、ラテンアメリカでは、炭酸アンモニウムが使用された製品の用途産業が成長していることから、市場は今後も緩やかに成長することが予測されています。

参考文献
https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0101-0296JGHEJP.pdf

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