塩化コリンとは
塩化コリンとは、有機化合物の1種であり、4級アンモニウム塩です。
化学式はC5H14ClNOで表され、分子量は139.63です。コリンは誘導体であるホスファチジルコリンと同様にリン脂質の構成成分として、もしくはアセチルコリンのように神経伝達物質として、生体内で重要な機能をはたしています。
体内で合成されますが、タンパク質の摂取が不足している場合に合成量が不十分となり、その結果として脂肪肝などがもたらされる場合があります。
塩化コリンの使用用途
塩化コリンの使用用途は、その生理学上の機能から、健康食品としてのサプリメントや、家畜の飼料に配合するサプリメントなどです。家禽産業の開発、発展により、塩化コリンの市場規模は増加し続けています。
生理学上の機能としては、3つが知られており、 1つ目は細胞膜の構造の保全と細胞シグナリングの役割、 2つ目はアセチルコリンへ合成されることによる神経伝達物質としての役割です。
3つ目に、S-アデノシルメチオニンを合成する代謝経路に関与する代謝物質トリメチルグリシン (ベタイン) を通じたメチル基の供与体としての役割が挙げられます。
塩化コリンの性質
塩化コリンは、CAS番号67-48-1で表される白色の結晶、または結晶性粉末、塊です。特異臭があります。融点は305℃で、可燃性および引火点に関するデータはなく、不燃物です。
水およびエタノールに極めて溶けやすい性質を持ち、光により変質するおそれがあります。高温、直射日光、吸湿性があることから湿気を避ける必要があります。危険有害な分解生成物として一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物、塩化水素ガスを発生する可能性があるため、取り扱い時は注意が必要です。
塩化コリンのその他情報
1. 安全性
GHS分類はすべて非該当ですが、適切な保護具を着用し、適切な環境で取り扱う必要があります。吸入し た場合は、新鮮な空気のある場所に移し、症状が続く 場合には、医師の診断が必要です。皮膚に付着した場合は、直ちに石鹸と大量の水で洗浄を行います。
眼に入った場合は、数分間注意深く洗浄し、コンタクトを装着していて、容易に取り外せる場合は取り外し、洗浄を続けます。飲み込んだ場合は口をすすぎ、意識のない人の口には何も与えません。
2. 取扱方法
使用者は、防塵マスク、保護手袋、側板付き保護眼鏡 (必要によりゴーグル型または全面保護眼鏡) 、長袖作業衣を着用して作業を行います。
屋内作業場で使用する場合は、発生源の密閉化、または局所排気装置の設置が必要です。また、取扱い場所の近くに安全シャワー、手洗い洗眼設備を設け、その位置を明瞭に表示します。
3. 保管
容器は遮光し、換気のよいなるべく涼しい場所で、ガラス製容器に密閉して保管します。また、不活性ガスの封入が必要です。
混触危険物質である強酸化剤とは離し、特に吸湿に注意して保管します。廃棄時は地域、 国、 現地の適切な法律、 規制に従って処置を行います。処理業者に委託する場合は、SDS等の取扱説明書の提供が必要です。
4. 火災時の措置
消火時は、水スプレー (水噴霧) 、二酸化炭素、泡、粉末消火剤、砂を使用します。使用してはいけない消火剤は、特にありません。周辺環境および保管場所にあるその他の化学物質に応じた適切な消火剤で、消火を行います。
火災時に、熱分解生成物として刺激性のある有毒なガスおよび蒸気を発生させる危険性があるため、適切な個人用保護具、消防士は自給式呼吸器および消火装備を着用し消火活動を行います。
5. 市場
2021~2026年の間に、4.11%のCAGRで成長すると予想されています。家畜産業からの需要増加が成長理由です。
さらに、肝臓の健康的な機能、脳の発達、筋肉の代謝、および神経系への良い機能を持つことから、人間のサプリメントとしての需要が高まることが期待されています。
参考: 塩化コリン市場
参考文献
https://www.mordorintelligence.com/ja/industry-reports/choline-chloride-market