水素化アルミニウムリチウム

水素化アルミニウムリチウムとは

水素化アルミニウムリチウムの基本情報

図1. 水素化アルミニウムリチウムの基本情報

水素化アルミニウムリチウムとは、化学式がLiAlH4で表される強力な還元作用を有する無機化合物です。

通称、LAHとも呼ばれます。還元剤として知られる水素化ホウ素ナトリウム (NaBH4) よりも還元作用が強く、カルボン酸やアミドも還元可能です。消防法で「危険物第三類 金属の水素化物」に該当します。

発火しやすく、水との接触により爆発的に反応するため、取り扱いには注意が必要です。

水素化アルミニウムリチウムの使用用途

水素化アルミニウムリチウムは強力な還元作用を有し、有機化学で還元剤として使用されます。具体例を挙げると、「エステル、ケトン、アルデヒドからアルコール」「アミド、ニトリル、ニトロ化合物からアミン」「ハロゲン化合物から脱ハロゲン化したアルカン」など、さまざまな化学物質を還元可能です。

反応性の高さから大量には使用されませんが、小規模な実験で使用されることが多いです。

水素化アルミニウムリチウムの性質

水素化アルミニウムリチウムは粉末状の強い還元剤です。還元剤のNaBH4よりはるかに強い理由は、B-H結合と比較してAl-H結合が弱いからです。

水素化アルミニウムリチウムと水は、激しく反応して水素を生じます。そのため、使用する際は、ジエチルエーテルのような脱水溶媒が必要です。

150°Cで分解し、モル質量は37.954g/mol、密度は0.917g/cm3です。

水素化アルミニウムリチウムの構造

水素化アルミニウムリチウムはアルミニウムの水素化合物であり、水素化アルミニウムイオン (AlH4) とリチウムイオン (Li+) のイオン結晶を構成しています。結晶構造は単斜晶系に属します。AlH4は四面体型構造を取っており、結晶中のAl−Hの結合距離はおよそ1.55Åです。

水素化アルミニウムリチウムのその他情報

1. 水素化アルミニウムリチウムの合成法

塩化アルミニウム (AlCl3) と水素化リチウム (LiH) の反応によって、水素化アルミニウムリチウムを合成可能です。重量で収率は97%です。反応混合物をエーテルに溶かし、ろ過によって残った固体の塩化リチウム (LiCl) を取り除けます。

2. 水素化アルミニウムリチウムの分解

水素化アルミニウムリチウムの分解

図2. 水素化アルミニウムリチウムの分解

水素化アルミニウムリチウムは塩基性が強く、アルコールのようなプロトン性溶媒と一気に反応して分解します。室温で水素化アルミニウムリチウムは準安定です。

長期間保存する場合には、少しずつLiHやLi3AlH6などに分解します。鉄、チタン、バナジウムなどが存在すると、分解は加速します。

3. 水素化アルミニウムリチウムの無機反応

水素化アルミニウムリチウムはTHF中で水素化ナトリウムと反応し、水素化アルミニウムナトリウム (NaAlH4) が生じます。同様に水素化アルミニウムカリウム (KAlH4) も、90%の収率で合成可能です。

THFやジエチルエーテルを溶媒に使用して、LiClによって、NaAlH4やKAlH4から水素化アルミニウムリチウムへの逆反応も進行します。

それ以外にも、水素化アルミニウムリチウムは臭化マグネシウム (MgBr2) と反応すると、水素化アルミニウムマグネシウム (Mg(AlH4)2) になります。

4. 水素化アルミニウムリチウムの有機反応

水素化アルミニウムリチウムの反応機構

図3. 水素化アルミニウムリチウムの反応機構

水素化アルミニウムリチウムは非常に反応性が高く、有機化学で強力な還元剤として利用可能です。特に、エステルやカルボン酸を1級アルコールに還元する反応が、幅広く知られています。

この反応では、AlH4の分解と同時に、誘起効果 (英: inductive effect) とメソメリー効果 (英: mesomeric effect) によって、電子密度が低い有機化合物の活性中心に、ヒドリドイオン (H) が反応します。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0112-0109JGHEJP.pdf

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