ホスフィン

ホスフィンとは

ホスフィン (英: phosphine) とは、リン化水素、あるいは水素化リンと呼ばれる、水素とリンが結合した無機化合物です。

化学式はPH3、分子量は34.0g/mol、沸点は-88℃、気体での密度は1.38g/L、CAS番号は7803-51-2です。ホスフィンの誘導体も含んで総称としてホスフィンと呼ぶこともあります。

常温では無色、不快な臭いのある可燃性気体の状態で存在します。溶解度は、水100Lに対して26mlです。

ホスフィンの使用用途

1. 半導体の原料

ホスフィンは、半導体製造における原料物質として使用されています。非共有電子対を持っており電子豊富なため、ドーピング剤としてケイ素をn形半導体にする場合に用いられています。また、InGaP (インジウムガリウムリン) など、半導体を製造する際の不純物を添加する目的でも有用です。

これらの半導体は、DVD 等の光ディスク向けレーザーダイオード、光ファイバー通信向けレーザーダイオード、受光ダイオードや高輝度発光ダイオード、携帯電話向けの電子デバイスなどに使用されてきました。

2. リンを含む化合物の製造

高純度のホスフィンガスを熱分解することによって黄リンを、さらに熱を加えることで赤リンを合成可能です。また、ホスフィンはさまざまなリンを含む化合物の原料です。ホスフィンはラジカル付加やマイケル付加、酸触媒や置換反応などのさまざまな反応を起こすことができるため、多種多様なリン原子を含む有機化合物の原料として使用されています。

さらに、オレフィンのモル比などの反応条件によって、1級、2級、3級ホスフィンの生成比率をある程度コントロールすることも可能です。そのうち2 級ホスフィンを酸化することにより、ホスフィン酸が製造されます。ホスフィン酸は、表面処理剤や金属抽出剤、樹脂添加剤および反応触媒などに利用されています。

3. 殺虫剤

穀物類の貯蔵庫において、主に害虫駆除や防カビ・殺菌を目的とした燻蒸作業にホスフィンが使用されます。ホスフィンは、大気中に均一に広まりやすく、「対象物の隙間に深く浸透する」「堅い種子の殻も透過する」という利点があるためです。

ホスフィンの性質

ホスフィンは、同じ15族元素である窒素を含むアンモニアと非常に類似した構造を持っていますが、アンモニアと比較するとリン原子の非共有電子対がプロトンを受け取る力はかなり弱いです。塩基性は持ちますが、かなり弱塩基です。

ホスフィンの生成方法としては、二リン化三カルシウムに水を加えるという方法などがありますが、他にも黄リンに水酸化ナトリウムを加えた時に生じる粗ホスフィンガス (ホスフィンと水素ガスの混合物) を生成することによって製造する方法などがあります。

ホスフィンのその他情報

1. 大気中のホスフィン

ホスフィンは、地球の大気中にわずかに存在しています。これは部分的な還元と不均化による有機物の分解により、生物学的に生成されたと考えられてきました。

また、木星の乱気流中にもホスフィンは存在しており、これは木星の内部で生成されているとされています。木星での大気中のホスフィンは別の物質と絶えず反応をしています。

2. ホスフィンの危険性

ホスフィンは常温の空気中で酸素と反応して自然発火し、爆発を引き起こしてしまう恐れがあります。また、極めて毒性が強いため、体内に摂取してしまうと、肺水腫などを引き起こしてしまい、死に至る可能性があります。

保管する際にはボンベ中に厳重に保管、管理を行い、使用する際には絶対に人の肌、口、目に触れないよう注意が必要です。毒物および劇物取締法では、「毒物 (リン化水素およびこれを含有する製剤) 」に該当します。GHS分類においては、可燃性ガスが区分1、急性毒性が区分1、特定標的臓器毒性が区分1に指定されています。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/7803-51-2.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です