マグネサイト

マグネサイトとは

マグネサイト (英: Magnesite) とは、マグネシウムの炭酸塩である炭酸マグネシウムを主成分とした鉱物です。

日本では菱苦土鉱 (りょうくどこう) 、または菱苦土石 (りょうくどせき) とも呼ばれます。混和物として鉄やマンガン、コバルトやニッケルが含まれていることもありますが、それらの混入はごく少量です。なお、鉄を少量含むものはブロイネル石と呼ばれます。

マグネサイトの使用用途

1. 酸化マグネシウムの原料

マグネサイトは、主に熱処理して酸化マグネシウムを生成する用途に使われます。酸化マグネシウムは、軽焼マグネサイトと呼ばれ、高炉やキルン、焼却炉の内張りとして使用される重要な耐火物 (耐熱性) です。軽焼マグネサイトは蓄熱性に優れるため、夜間蓄熱暖房機や電気暖炉などの蓄熱芯としても使用されます。

また、軽焼マグネサイトは優れた土壌硬化剤です。土中の水と反応し、水酸化マグネシウムを経て、最終的に炭酸マグネシウムに変化し、硬化剤として作用します。環境にも優しく、農業分野で主に使われています。

2. 芸術作品

マグネサイトは、ビーズなどの原料として利用されます。色が付けやすい性質から、染色されてトルコ石やラピスラズリの代用品としたり、カットや穴あけ、研磨によってさまざまな装飾品に変化します。

3. その他

マグネサイトは、床材 (マグネサイトスクリード) のバインダー、合成ゴムの製造における触媒や充填材、工場で発生する排煙中に含まれる二酸化硫黄を除去する製品の原料としても使用されています。

マグネサイトの性質

マグネサイトは、菱面体や三方晶の結晶構造を有したモース硬度は3.5〜4.5の炭酸塩鉱物です。純粋なものは透明〜白色を示し、ガラス光沢を有します。紫外線を照射すると、緑または青の蛍光およびりん光を発します。

モース硬度とは、主に鉱物に対して使われる単位の一種です。1〜10の数字で表され、あるもので引っかいたときに傷がつくかどうかの指標です。例えば、硬度2は石膏で引っかいた際に傷がつくかどうか、硬度10はダイヤモンドで引っかいたとき傷がつくかどうかなどと、標準鉱物が設定されています。

また、マグネサイトを1,000ºC程度で焼成すると、主成分である炭酸マグネシウムから二酸化炭素が脱離し、酸化マグネシウム (MgO) が得られます。主成分である炭酸マグネシウム (英: Magnesium carbonate) の化学式はMgCO3で表され、分子量は84.31です。

無水物のCAS登録番号は546-93-0です。水和物としては、一水和物 (cas番号: 17968-26-2) と二水和物 (cas番号: 5145-48-2) 、三水和物 (cas番号: 14457-83-1) 、五水和物 (cas番号: 61042-72-6) が知られています。無水炭酸マグネシウムは、350℃に融点 (分解) を持つ、室温で密度2.958 g/cm3の白色固体です。無味無臭で三方晶の結晶構造を持ちます。

マグネサイトのその他情報

1. マグネサイトの製造法

天然では、主に中国で産出されます。日本では、茨城県常陸太田市にある長谷鉱山や長崎県西海市および大分県豊後大野市にある尾平鉱山にて産出されていましたが、現在はどちらも閉山しています。

人工的には、マグネシウム蛇紋岩 (リザード岩) の炭酸化によっても合成可能です。しかし、本手法では炭酸マグネシウム三水和物 (ネスクホナイト) が生成します。

2. 取り扱い及び保管上の注意

ここでは、主成分である炭酸マグネシウムについて解説します。

取り扱い時の対策
取り扱う際は、側板付きの保護メガネ (必要に応じゴーグルまたは全面保護メガネ) と長袖の保護衣、保護手袋を着用します。局所排気装置内で使用してください。

火災の場合
熱分解で、一酸化炭素や二酸化炭素マグネシウム酸化物を生成するおそれがあります。現場状況と周囲の環境に適した消火方法を選択してください。

保管する場合
ポリエチレン製の容器に密閉し、直射日光を避けた換気が良く涼しい場所に保管してください。保管場所は必ず施錠します。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0113-1444JGHEJP.pdf
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Magnesium-Carbonate

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