ヘキサン酸

ヘキサン酸とは

ヘキサン酸 (化学式: C6H12O2 ) とは、炭素数6の脂肪酸です。

分子量は116.13、密度は0.93g/cm3、融点は−3°C、沸点は205°Cであり、常温においては無色の液体状態で存在します。別名で、カプロン酸とも呼ばれます。

ヘキサン酸の使用用途

1. 香料

ヘキサン酸は、主に香料および香料原料として使用されます。例えば、ヘキサン酸とエタノールの結合したエステルであるヘキサン酸エチルは、ややフローラルなアップル、バナナ、パイナップルを想起させるようなフルーティー感のある物質です。

その他にも、ヘキサン酸を原料とする香料として3−ヒドロキシヘキサン酸エチルや、カプロン酸アリル、エチルヘキサン酸セチルなどの物質があり、いずれもフルーツ様のいい匂いを発します。このように、ヘキサン酸を原料とした香料により、フルーツ系フレーバーをはじめ、ウイスキー、ブランデー、バター、チーズ、チョコレート、ナッツなどのフレーバーを生成する用途で使用されています。

2. 有機合成

ヘキサン酸はカルボキシ基を持つカルボン酸なので、さまざまなカルボン酸誘導体を合成することができます。カルボン酸自体反の応性はあまり高くないですが、縮合剤 (DCCなど) を用いることで、エステルやアミンをカルボン酸から合成することができます。

しかし、カルボン酸を塩化チオニルなどの反応剤で酸塩化物 (-COCl) へと変換することによって、反応性を大きく上げることが可能です。酸塩化物は求核置換反応を非常に受けやすい物質であるため、ケトンやニトリル、エステル、アミン、および様々な保護基の連結を簡単に行うことができます。

また、エステル結合やアミド結合を多数回繰り返したようなポリマーもカルボン酸から合成可能です。このようなポリマーは、プラスチックやナイロンなど私たちの身の回りの様々な場面で多く使用されています。

ヘキサン酸の性質

ヘキサン酸は、ヤギの体臭のような不快な臭いを持つことが特徴です。この物質の匂いは、「重く刺すような古い油のようなニオイ」「銀杏の実のニオイの1種」のようにも表現されることがあります。ヤギの毛に含まれる油の分解物からこの物質が得られたことによって命名されており、ヤギの学名である「Capra aegagrus」に由来しています。

天然にも存在する物質で、バター、パーム油、やし油中にも含まれます。製法としては、ヘキサン酸エステルの加水分解などがありますが、大量に製造するときにはヘキシルアルコールの空気酸化 (酸素による酸化) で合成することが可能です。

ヘキサン酸のその他情報

1. ヘキサン酸の危険性

ヘキサン酸は、消防法においては危険物第四類に該当しています。また、毒物および劇物取締法においては劇物に指定されているため、取り扱いや管理には注意が必要です。

この物質は皮膚や目に対して非常に強い刺激性を持っているため、扱う際には必ず保護メガネやゴム手袋の着用を行う必要があります。摂取してしまった場合には、肺に吸い込んで化学性肺炎を起こすことがあるという報告があります。もし皮膚や目に付着してしまった場合は、すぐに大量の水で洗い流すことが原則です。

2. 誘導体の性質

ヘキサン酸にはさまざまな誘導体が存在しますが、例えば、3-ヒドロキシ-3-メチルヘキサン酸はわき汗のにおい源の物質です。

また、2-エチルヘキサン酸は主に金属石けん原料、合成潤滑油原料、特殊可塑剤原料、防錆添加剤、アルキドレジン変性剤などに使用されており、日本では1年あたり10,000~100,000t製造されている非常によく使用される物質です。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0108-0629JGHEJP.pdf

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です